09 «1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.» 11

肥前陶磁器あれこれ~

オールド香蘭社、オールド深川、古伊万里、平戸焼などを集めています。

 

Fine & Curious (色絵陽刻松鶴文三足注器) 

2016年は有田における日本磁器誕生400年記念の年にあたります。
当ブログでもこのアニバーサリーを祝して
有田焼の華麗なる歴史に一役を買った一品を紹介することにしましょう。

古伊万里ファンであれば、必ず手元に持っておきたい名著の一つに
オランダの東洋古陶磁研究の大家であるChristiaan Jorgの
Fine & Curiousがあります。

その著は、本国オランダからバタビアの東インド会社にむけて
送られた伝書の以下のような抜粋から始まります。

'Your Honour shall look to it that everything is fine and curious as to painting...'

閣下におかれましては、(買い付ける磁器は)すべてが、その絵付けにいたるまで
精巧(fine)で珍しい (curious)ものであるよう、ご配慮ください 
(拙訳)

かくして、東インド会社は日本の有田から
極めて高品質で東洋趣味にあふれた古伊万里を
多数買い集め、本国に送るに至ったわけです。

Fine & Curious.
なんという魅惑的な言葉でしょう。

古伊万里ファンにとって、これほど的確に
古伊万里を形容する言葉があるでしょうか?

もっとも、Curious という言葉の選択は
あくまでもヨーロッパ人の視点によるものです。
ヨーロッパ人の興味をそそるような珍しくて
おもしろいもの、といった意味でしょうけど、
とにかく当時のヨーロッパ人にとっては
東洋の磁器は、非常に珍しく熱狂せずには
いられなかったのではないでしょうか。

ザクセン王を始め、ヨーロッパの貴族を魅了した古伊万里ですが、
その輸出品の中でも特に珍しいコーヒーポットを今日は紹介しましょう。

色絵陽刻松鶴文三足注器です。

coffee pot

九陶の蒲原コレクションやハウステンボス内の古伊万里美術館にも
所蔵してあるこのコーヒーポットは18世紀の作。
東インド会社からの注文品だそうです。

16世紀、アラビアからヨーロッパにコーヒーが伝わると、
あっという間にあちこちで大流行。

九陶から出版されている輸出古伊万里本の決定版(!)
「古伊万里の道」によると、東インド会社から有田への
コーヒーポットの製作・注文に関する資料は
1680年ごろにやっと文書等に現われます。

有田焼はその創生期より中国のやきものを常に追いかけてきたわけですが
このコーヒーポットに関しては、実は有田のものが中国製よりも
先に作られたそうです。

ヨーロッパでコーヒーが流行した17世紀、中国は明王朝の衰亡・
清王朝の興隆と、国内は荒れに荒れておりました。
清王朝が西洋に磁器輸出を禁じたことも相まって、
東インド会社の注文、買い付けは自然有田へと向いたわけです。

coffee pot 2

さて、三足で胴長のポットは主に1720-1760年にかけて輸出されました。
このような形の注器は、皆同じ形であることから、型にはめて成形されたものです。
ちなみに三つ足のポットはイギリス風なのだとか。

coffee pot 3

このポットについては、いくつか説明すべき点がありますが
まずは、これがなぜ美術館でもない我が家にあるのかということ(笑)

ご存知の通り、このポットはいわゆるミュージアムピースと呼ばれるべきものです。
本物がネットオークションに出回ることはほぼ100%ありません。
ネットでみたよ、という方、それはフランスのサムソン製か明治期の
復刻版ですよ(。>ω<。)ノ 
お気をつけください!

80年代バブルの時代、古伊万里ブームも手伝って
この手のものは殆どヨーロッパから日本へ買い戻されました。
その後、これらの里帰り珍品はほとんどが
美術館や古陶磁館などのしかるべき
場所に収められたわけです。

1年半前でしょうか。ハウステンボスでワンピースクルージングの後、
古伊万里を集めた館に行き、このポットの前で指をくわえながら、
「こればっかりは絶対手にはいらないよねぇ・・・」と嘆いていた私。

ところが数ヶ月前、その私の目の前に突如このポットが現われました。
見つけたのはもちろん相方(!)

お宝ハンターの彼ですが、最初に見つけたときはさすがに
信じられなかったそうです。

This can't be real. It's too good to be true.
などとウダウダ言っておりました。

それに、形がちょっと変。三つ足が短い・・・・?

「これさぁ、本物かなぁ・・?」と問う彼に
一瞥くれる私。

おおお!本物じゃないですか!

「ギャァーーー!!本物かなぁ、じゃねぇ~!!!
なにをやっとるんじゃぁ!さっさと買わんかい!!!!」と怒る私。

美術館でしつこく見ていたのですぐに本物だと判った私でしたが、
相方が「???」と思ったのはズバリこの変な形のせいなんです。
不具合というべきか・・・・。

通常、美術館にあるこの手のポットは三つ足になっており
その足の部分は象の頭部もしくは美人像、あるいは男性像になっております。
このポットの場合、なんとその三つ足の部分が短いですね。
なぜかと言うと、なんと胴体を切ってある(!)からなんです。

その理由として考えられるのは、おそらく三つのうちいずれかの像が破損して
三つ足で立てなくなったので、(1)修理するか、(2)胴体を切って均一の
高さにする、という選択肢を迫られたものと思われます。

っていうか、普通(2)じゃなくて(1)を選ぶだろう!!!
Σ(´Д`*)

coffee pot 4

ボクシングへレナ・・?

coffee pot 5

いや、江戸川乱歩か・・・・??

coffee pot 6

嗚呼、なんということでありましょう。

でも、前の持ち主としては苦肉の策だったのでしょうねぇ。
捨てられなかっただけましか・・?

一応、これでも形として成り立っているところがスゴイ・・・・?

coffee pot 7

でも、さすが古伊万里の真骨頂とでも言うべき作品。
とにかく存在感が半端じゃありません。

そこにあるだけで、その佇まいに圧倒されます。
イヤ、本当になんかスゴイんですよ。

存在するコーヒーポットは美術館にあるものですら、ほとんどその蓋が喪失しています。
こちらも蓋はありませんが、これはしょうがないでしょう。

coffee pot 8

このコーヒーポットはヨーロッパで大層人気があったようです。
あんまり人気があったので、フランスのサムソン窯がこの模倣品を作り
販売すると、大いに売れました。

コレクターが古伊万里と思い込んで実はサムソン製や復刻版を
所有しているのをよく見かけます。
コレクターですら贋作を買ってしまうという古伊万里
コーヒーポット。

では、贋物と本物はどこが違うのでしょう?

coffee pot 9

真贋を簡単に見分ける上で一番の違いは、
ズバリ本物は(1)色絵付けの部分があまりよくない(ボロい・・)
そのわりに(2)陽刻があり、良くみると結構凝っていることです。

だまされやすいパターンとしては、見た目が妙に綺麗で
陽刻がないもの、美人像の顔に手抜きがあるものは
避けたほうが良いかもしれません。これらはサムソン製の特徴です。

coffee pot 10

では、本物はどう凝っているのか、というと
たとえば、写真をご覧ください。

鶴など、絵付けが雑なわりにはきちんと立体感が出ています。
また、鶴の雛がいる巣の陽刻、かなり細かく出来ているとおもいませんか?
巣のもつ柔らかい質感がよく出ています。
こんな質感を、よくもまぁ陽刻だけで表現できたもんです。

coffee pot 11

細部。
雑なようで実は凝っている、というのが
ポイントというべきか・・・?

coffee pot 12

東インド会社から輸出されたものには、いわゆる国内向け
元禄時代の精巧さや完成された美しさはありません。

しかし、全体的に奔放で、なんと言うか
Lively なわけです。

動的で生き生きとした美しさがあると思います。

coffee pot 13

取っ手にもきちんと絵付け。

coffee pot 14

鶴や松をかたどった陽刻だけでなく
松の木にも立体感をだすようあちこち手をかけています。

サムソンや復刻版は一見絢爛豪華ですが
そのつくりは極めて2次元的であると言わねばなりません。

coffee pot 15

東インド会社が注文したというこのコーヒーポット。

バタビアの総督に送られた手紙にもあるように
その注文品の多くは、まさにFine & Curious だったのです。

coffee pot 16

今年は、日本磁器誕生400年記念の年です。
有田にある美術館や古陶磁館の中にも、
これと同じような古伊万里のコーヒーポットを所蔵している所は
いくつかあります。

有田へ行く折には、是非本物をじっくりご覧ください。
そのFine でCuriousな魅力にきっと驚かれることでしょう。

ブログ村に参加しています。
記事が面白ければ、
ポチっとよろしくお願いします。

にほんブログ村 美術ブログ 古美術・骨董へ
にほんブログ村

にほんブログ村 美術ブログへ
にほんブログ村






Related Entries

Category: 古伊万里

tb 0 : cm 0   

Comments

Post a comment

Secret

Trackbacks

TrackbacksURL
→http://micnoski.blog.fc2.com/tb.php/94-06614b1e
Use trackback on this entry.