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肥前陶磁器あれこれ~

オールド香蘭社、オールド深川、古伊万里、平戸焼などを集めています。

 

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No Country for Old Men  ~旅する平戸焼~ 

2015年も残すところあと一週間となりました。

今年最後のネタは、輸出平戸焼・染付龍山水文水注です。
水注、と書きましたが、ティーポットだと思います。

こちらです。

HD1.jpg

三川内の窯は幕末・明治を通してイギリスに沢山細工物や卵殻手を輸出しました。
龍の細工の酒注は特に人気があった様で、イギリスのオークションでは
よく見かけます。

過去にもこんなのとか
こんなのとか
こんなのを紹介しましたね。

この手の龍細工の水注は、平戸の他には宮川香山もイギリスに多く輸出しました。

アメリカやオランダの骨董市場ではあまり見かけない龍の細工物がイギリスで
多く出回っているのには理由があります。
大英帝国では、もともと王室紋章である獅子だけでなく、
竜に対しても崇拝する傾向にあります。

竜はもともとイギリスが併合したウェールズ国の象徴ですが、
竜への崇拝はウェールズの伝統だけでなく、
Dragon Slayerを好む西欧の文化背景にもよるものです。

たとえば、英国の国旗は17世紀よりユニオンジャックですが、
旗の中央にある白地に赤い十字はセント・ジョージ・クロス、
つまり聖ゲオルギオスの十字です。

邪悪な竜を退治し、人々をキリスト教に改宗させたセント・ジョージ、なんて
いかにも西洋→善、オリエント→悪という二分化された世界観を好む
ヨーロッパ人ならでは、ですね。

また、ベーオウルフにも竜退治の話が出てきますが
イギリス人の竜崇拝は、竜そのものの崇拝でなく
ドラゴンスレイヤーである自分達の先祖に対する崇拝なのかも
しれませんね。

文化の記号論ですなぁ・・・

HD2.jpg

さて、平戸焼の龍のついた水注にはいろいろなパターンがありますが、
これはかなりモダンなデザインですね。
数ある平戸焼の龍文水注のなかでも、結構珍しい形だと思います。

製作されたのが、おそらく幕末・明治頃だとすると
デザインのモダンなところが興味深いですが、
以前紹介した蔵春亭・西畝のポットとデザインが似ていますので、この時代でも
輸出向けにこんなポットを作ったんでしょうね。

HD3.jpg

この口からお湯がでてくるわけですねぇ。


気分はドラゴンスレイヤー!

HD4.jpg

このポット、完品だと思っていたら、
なんと爪がひとつ割れていました。

ぐぬぬ・・・と思っていたんですが、よく見ると
なんと爪の割れた痕に釉薬がかかっているんですよ。

一度窯で焼いた後、割れていたにもかかわらず釉薬をかけて
完成させたのでしょうが、これを見てもこの手のポットはかなり
大量生産されていたのではないでしょうか。

先に、このデザインのポットは少ないと書きましたが、
推察するに、おそらく大量輸出されていたにも関わらずデザインがモダンなこと、
美術工芸品としてのお宝的要素が他の細工物と比べて少ないことから
保存される率が低かったのではないかと思います。

よい出来だと思いますが、確かに他のデザインと比べると
「素敵!」度が低いかな・・?

HD5.jpg

山水画。

HD6.jpg

後部から。

龍の尻尾の造形が良いですね。

龍顔です。
細工物として出来栄えは悪くないと思うのですが・・・

HD7.jpg

HD8.jpg

さて、製作されたのはおそらく幕末・明治だと思います。
理由は、この時期平戸細工ものの輸出が多かったこと、
もうひとつは、呉須の色が明治後期・大正の妙に明るい色とは
異なることです。

呉須、といえば、この色と一番近いのは当初深川栄左衛門作と思われた花瓶の色です。

まぁ、この花瓶も予想としては平戸か、平戸エッセンスを盗んだ
深川栄左衛門のものだと思うのですが、いろいろと専門書を読んでみると、
呉須の発色は窯の中にあった時間の違いで異なることもあるので、
たとえ同時代に作られたものでも、そのせいで発色が異なることがあるそうです。

HD9.jpg

ためしに輸出平戸と比べてみましたが・・・

同時代・・・じゃなさそうですなぁ・・・

HD10.jpg

この二つ、写真ではそうでもありませんが、実際の発色は
かなり近いです。

HD11.jpg

19世紀半ばに大英帝国の繁栄を謳歌していたイギリス人の発注で造られた
竜(龍)細工の水注が、150年以上の時を経て、過去イギリスの植民地であり
今は新帝国となったアメリカになぜか暮らしている長崎人の手に
渡ったというのは感慨ぶかいものがあります。

骨董の魅力はこれにつきると思います。

どんなものでも、何十年、何百年という長い旅をして、
今自分の手元にある、ということ。

今を生きる自分自身と過去とのつながりを感じる
瞬間を楽しむのが骨董収集の醍醐味ですね。


・・・などと考えていると、いつもコーエン兄弟の傑作、
No Country for Old Men の名場面が浮かんできます。




Anton Chigurh: You know what date is on this coin?
Gas Station Proprietor: No.
Anton Chigurh: 1958. It's been traveling twenty-two years to get here.
And now it's here. And it's either heads or tails. And you have to say. Call it.


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