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肥前陶磁器あれこれ~

オールド香蘭社、オールド深川、古伊万里、平戸焼などを集めています。

 

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一富士二鷹三茄子(前編) ~染付山水富士山透彫丁子香炉(風炉)~ 

明けましておめでとうございます。

このブログを初めて早9ヶ月が経ちました。
記事を読んでくださったり、コメントをしてくださる皆様に本当に感謝です。
今年は、駿馬のように(?)速く記事を更新していきたいな、と思っております。
(といいつつ、新春の挨拶が今日に至るとは・・・・)
いや・・・本当ですよ・・・

今年初めての記事なので、新春にちなんだものを紹介したいと思います。
生憎、午年にちなんだ骨董は持っていませんが、正月仕様と思われる
めでたい香炉を紹介したいと思います。

富士山の透かし彫りの入った染付山水の丁子香炉(風炉)です。
ちなみにこれはMy best item of all timeでごじゃる。


clove burner 1

さて、皆様は丁子香炉というのをご存知でしょうか?
この香炉は見てのとおり、30センチほどの高さのある大型です。
茶釜形の香炉は二層になっていて、下の段に火を入れて
上の段の丁子(クローブ)を焚き染めるようになっています。
おそらくクローブそのものを焚くのではなく、エッセンシャルオイルのようなものを
焚いたと思われます。

昨今は高級料亭の御手洗などににおい消しとして置かれる事もあるようですが
丁子香炉の用途はその時代とものによるようです。

スパイスの一種であるクローブ(丁子)は江戸時代に日本に広まったそうです。
長崎奉行の指導のもとオランダの通詞がその造り方を学んだというこの丁子油は
その後次第に貴重品として重宝されるようになったそうです。
丁子香炉そのものは貴人のために造られたそうですが
骨董として見かけることはあまりないと思います。

私が知る限り海外では、NYのメトロポリタン美術館が薩摩焼と平戸焼の
丁子香炉を所有しています。また、鍋島のお姫様が前田家に興し入れの際に
立派な丁子香炉を所持していたと聞いています。

clover burner 2

この丁子香炉、面白いのはそのモチーフです。
タイトルにも書きましたが、なんと一富士二鷹三茄子なんですよ。

まずは透かし彫りの富士山と朝日。

clove burner 3

染付山水の絵付けの見事さときたら・・・

clover burner 4

茶釜の取っ手は鷹の爪になっています。

clove burner 6

近影です。

clove burner 21
clove burner 19

釜の部分にも山水画が・・・

clove burner 5

香炉の脚の部分はなんと茄子の形です。

ナスですよ、ナス!
めでたいなぁ。

clove burner 17

表には富士山と朝日の透かし彫りが施してありますが、その裏側には
雲の透かし彫りがあります。

なかなか凝ったつくりになっています。

clove burner 8

興味深いのはモチーフだけではありません。

この茶釜形香炉のデザインも凝っていると思いませんか?
釜の下の半分は瓔珞文あるいは輪宝文に染付雲ですが、
非常にスタイライズされていると思います。

clove burner 9

その下部とは全く対照的な染付山水の手の見事なこと。
こんな山水は見たことがありません。

平戸焼の上手に山水画のものがありますが、この山水には到底及びません。
どこがどうとは言いにくいのですが、例えて言うなら平戸焼の山水は職人の手によるものです。
それに対して、こちらの山水はまるで画家が絵筆を取って描いた様な感じです。
圧倒されるような美しい画をみているような錯覚におちるこの山水はどうしても
職人が描いた物とは思えません。

clove burner 11

最初この香炉を見たときは実はてっきり中国の物だと思いました。
絵付けの素晴らしさのせいでしょうけど。

もう一つ、唐物だと思った理由は、呉須の色です。
平戸焼でも有田でも見た事のない、独特の深く澄んだ色です。

clove burner 12

問題はこの香炉がどこで造られたか、ということです。

実はこの丁子香炉、ナゾの物体Xなのです。

呉須の独特の色、高い技術を要する造形、山水画の出来などを考えると
どうしてもこの香炉、只者ではないように思えてなりません。

clove burner 13

どうしても気になるので、昨年の夏とこの冬の里帰りの折に、
この香炉の写真をいろんな人に見せてプロのご意見を伺いました。

長くなりますが、覚書も兼ねて以下に要約しておきます。

1.N市の某有名観光地近くの骨董やさん

これはたぶん瀬戸か平戸だと思う。時代はおそらく新しい、昭和時代くらいのもの。
その理由は、一富士二鷹三茄子というのは昭和時代に入ってからのものであるからだ。

備考:一富士二鷹三茄子は江戸時代には既にあった言葉である。
徳川家康にまつわる逸話からきている。

clove burner 14

2.旧鍋島藩窯のある大川内山の色鍋島ものを造る窯の社長さん。

丁子香炉を見たのは初めてである。実物を見ないとなんともいえないが
呉須の発色は長崎の亀山焼によく似ている。
有田、鍋島ではない。

clove burner 15


3.N市の骨董街である中〇川近辺の骨董兼中古品やさん。

これは便所のにおい消しだ。なんということはない。(ウッ!!!)

4.N市で一番古い商店街に店を戦前から構える有名な骨董屋さん

これはおトイレのにおい消し。でも立派なものなのでなにか謂れがあるのかも・・・
亀山にも見えるけど、これがもし亀山なら大変なことだ。

clove burner 16

5.有田の某陶磁器会社役員及び骨董ディラー。
(80年代に海外から明治有田の大作を買い戻して美術館に収めた方です。)

これが便所の香炉だと?誰が言ったのか知らないがとんでもないことだ。
これは丁子香炉というもので貴人が所有するものだ。
実物をみないとなんとも言えないが、呉須の色からすると
亀山だと思う。素晴らしいものなので大切に扱いなさい。
 
clove burner 20

6.N市にある良品の亀山焼を所有・販売する骨董屋さん。

これは絶対に亀山焼ではない。この距離(1メートル)からでもわかる。
だいたい亀山にこんな凝った作品は造れない。透かし彫りなどをする高等な技術は亀山にはない。
これは平戸か或いは有田か、瀬戸物という可能性もあるが亀山では絶対にない。
これがもし亀山だったら大変なことになる。

備考:亀山焼には透かし彫りをした作品は存在する。(天草陶石使用)

7.N県立博物館の学芸員(この博物館の亀山焼のコレクションは日本随一である。)

自分は絵画の専門であり、陶磁器の専門ではないが、これはなるほど亀山焼を
思わせる文人画風の絵付けのように見える。但し、亀山焼でこういう凝った造形のものは
まだ我々は見たことがないので、なんとも言えない。しかしながら、それはあくまで先入観であり
我々がまだ亀山焼の全貌を知らないだけなのかもしれない。

8.S県立の陶磁器博物館(柴田コレクションで有名です)の学芸員

実物を見ていないのでなんともいえないが、これは長崎の亀山焼に見える。
そうでなければ瀬戸か。有田ではないと思う。非常に珍しい作品である。

clove burner 7

さて、これが昨年2013年夏のヒヤリング(!)の成果です。
どうですか?

有田・鍋島はこれは亀山だといい、亀山を知るN市の人々はこれは有田だと言います。
なかなか複雑ですね。

まさにラビリンスに迷い込んだような謎で包まれたこの香炉。
一体、どこで誰のために作られたものなのでしょう?

購入地は、イギリスの大学都市ケンブリッジの近くの町です。
このあたりも興味深いところです。

さて、新春はまずこのナゾの物体の考察から始めたいと思います。

後編に続きます。

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Category: 亀山?

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コメント

Michnoskiさま、こんばんは。
もうそちらに戻っているのですね。
これは丁子香炉と言うものなのですね、初めてみました。
この作品の製作年と窯元を当てるのはかなり難問ですね。
私は「一富士二鷹三茄子」の焼き物は志田焼くらいしか見てないと思う。
これだけの絵付けの磁器ですから伊万里でなければ幕末頃・明治初期では鍋島(大河内)・平戸・亀山・湖東焼等でしょうか?京焼も可能性ありかな?。
銘はなしですよね。
いずれにしても高級磁器に間違いないですね。
それとも時代は下がって昭和の可能性も有りですかね。
イヤー難しいですね、早く続編を読みたい。

kahohira #tGuBn3nQ | URL | 2014/01/15 03:20 [edit]

kahohiraさま

こんにちは!
早速コメント、ありがとうございます。
そうなんですよ~。かなりナゾな物体です。
骨董屋さんや窯元さん、ディラーさん、学芸員の皆さんの
コメントがバラバラなのも興味深いところですね。
私もkahohira様の意見に全く同感です。
可能性としては、1800年以降のもの(おそらく幕末?)だと
思います。選択肢も、大川内、有田、平戸、亀山、瀬戸、京、そして
湖東あたりを最初のハードルにするのが妥当かな、と思います。
この香炉にはまだ面白い仕掛けがあるんですよ~
乞うご期待~(笑)

Michnoski #- | URL | 2014/01/15 12:16 [edit]

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