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肥前陶磁器あれこれ~

オールド香蘭社、オールド深川、古伊万里、平戸焼などを集めています。

 

箸より軽い?~古平戸卵殻手染付蓋碗~  

”箸より軽い茶碗をつくってみよ”

平戸藩のお殿様の鶴の一声で超薄型の器が作られた、というのは
古平戸の伝説を彩る卵殻手を語る上で、もはや定説となっています。

さて平戸焼ファンであれば、この箸よりも軽いと言われる伝説の卵殻手の茶碗、
一度くらいは意地でも手に取りたいものです。

私が初めて卵殻手と呼ばれる器を手に取ったのは、一昨年平戸に旅行した際でした。
市街地にある井元さんという方の個人経営されている美術館(と呼んで遜色ないのですが)で
初めて色絵の卵殻手を見せてもらいました。親切なご主人は、硝子棚から貴重な茶碗を
取り出してくださり、手に取らせてくださいました。

その器の軽かったこと!

光に透かすとうっすらと透き通るこの卵殻手、まさに肥前陶磁器の技術の
粋と呼んで間違いないと思います。

あの感動から2年。

古平戸の卵殻手は意外と骨董の市場に出回っていることを知りました。
市場の元はオランダです。

卵殻手が初めて造られたのは1830年代だそうですが、この時代の日本の
貿易相手国はオランダでした。
卵殻手の生まれた時代とその背景を鑑みると、この手の骨董がかの地から出てくるのは
道理です。

さてその卵殻手、出品されたものをいろいろと見てみましたが、どうもこの時期とそれ以降に
輸出された色絵の古平戸卵殻手の絵付けそのものに抵抗を感じます。

どうしたものか、絵の主題がオリエンタリズムを助長するようなゲイシャであったり、
サムライであったり六歌仙であったりするわけです。
欧米へ輸出するのでこのモチーフは仕方がないのですが、古平戸ファンの私としては
イマイチ品がないなぁ、と思ってしまうわけです。
絵付けも大抵は、明らかに三川内でなく別な場所でされたようなのです。
せっかく平戸焼の技術の粋を集めたのに、出来上がりがなんとなくイマイチだというこの矛盾。

そうしてグズグズと買おうか買うまいか悩んでいたある日のこと、ついに、これだ!という
卵殻手の蓋碗を手に入れることができました。

それがこちらです。

eggshell 1

色絵ではありません。

ですが、この繊細な絵付けを見てください。
これは明らかに三川内で全ての工程を経て造られたものです。
この時代の古平戸の染付は概ね呉須の色が有田や伊万里と比べて薄いのですが、
これも当時の平戸焼の特長をよく捉えていると思います。

eggshell 2

時代もおそらく古いものだと推察します。
というのも、時代が上がると蓋碗の形が随分と西洋好みに変わるからです。

ちなみにこの蓋碗、興味深いのは清時代の茶器の形ですね。
当時エッグシェルといえばチャイナが主流でした。
当然ヨーロッパの諸侯はこれを買い求めたわけですが、その流れを意識してか
卵殻手輸出初期にはやはり本場のチャイナの茶器に似たものを真似て造ったようですね。
その後だんだんと、いわゆるカップとソーサーなるものを造り、ヨーロッパの市場に
ヒラドのエッグシェルという名を轟かせることになるわけです。

eggshell 3

古平戸というと、江戸時代後期の細工物が有名ですが、平戸は造形にも優れていましたが
献上窯でもあったので、絵付けにも優れていました。

繊細で上品な絵付けは唐物に負けずとも劣りません。

eggshell 4

絵付けの良さは見てのとおりですが、さてこの解釈は簡単なものではなさそうです。
目をひくのは以下の文、孔子の有名な故事です。

義士不飲盗泉之水、志士不受嗟来之食

渇しても盗泉の水を飲まず、というアレですね。

eggshell 8

ひらがなのほうは皆目見当がつきません。

もう一つの絵は双龍と燈篭でしょうか・・・

最後の絵は山水。

唐物のモチーフをそのまま使っているのは間違いないようですが
全体の意味はわかりかねます。

eggshell 5

裏には、三川内平戸製の文字が。
平戸藩の出島経由の輸出品のものは、このように綺麗な文字で書いたものが多いです。

eggshell 6

eggshell 7

ご覧ください、この薄さ。これが卵の殻のようだと言われる所以です。
光にかざすと底が透けるほど薄いのです。

eggshell 9

1ミリという薄さです。

eggshell 10

さて本題に入りましょう。

卵殻手は本当に箸より軽いのでしょうか?

卵殻手蓋碗全部(ソーサー、碗、蓋)すべてを計量器(タニタ)にのせてみたら・・・

eggshell 12

138グラム。

お箸は一組35グラムくらいなので、これでは箸より軽いとは言えません。
まぁ、そこはそれ。
箸より軽い、というのはあくまでものの喩えですので・・・

eggshell 13

ちなみに碗だけだと54グラム。

数字だけだとどれほど軽いかわかり辛いですね。

ちなみに、我が家のテーブルスプーンの重さは・・・

eggshell 14

71グラム。

スプーンよりは全然軽いお碗です。

ちなみに波佐見焼きの焼酎割り専用カップだと・・・

eggshell 15

208グラム。

蓋碗の全てを含めた重さのおよそ2倍以下。

やっぱりエッグシェルに軍配が上がります。
ちなみにこのカップ、普通のコーヒーカップなどと比べても特に重いものではありません。
ごく平均的なカップです。

eggshell 16

中国の陶磁器、チャイナの質の高さを競う条件の一つは器そのものの精巧さ、色の白さ
そして薄さと軽さなのだそうです。

日本では、陶磁器の最高品質を誇るのは鍋島だと言われていますが、グローバルスタンダードに
照らし合わせると、国内で献上品としてやや格が下がると言われる平戸も鍋島に負けていません。

この平戸焼の粋である卵殻手は、三川内近郊で採れる網代陶石と天草陶石の組み合わせで
生まれた逸品ですが、幕末そして明治になると、輸出業の盛んな有田の会社が
三川内にデミタスカップなどを造らせ、有田で絵付けをするようになります。

そんなわけで、次回は卵殻手のデミタスをいくつか紹介したいと思います。

eggshell 11

それにしても古平戸の卵殻手、薄色の呉須が白磁に映えて、なんとも気品に満ちています。

あ~、好きだなぁ・・・・・平戸焼。


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Category: 平戸焼

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Comments

Michnoskiさま、こんばんは。
卵殻手いいですね。
海外だから購入できるのでしょうね、国内では出品は無いように思います。
二客セットで入手ですか購入額は如何ほどでしょうか?。

やはりMichnoskiさまはお話が上手ですね引き込まれて最後まで一気に読んでしまいました、私も見習いたいです。

数年前に平戸と言うことで購入した小碗があります、その当時の私は卵殻手は知らずただ「平戸」と言うだけで購入したのですが今回の卵殻手のお話で、もしかしたら卵殻手の可能性があるかも?と思いました近日に投稿しますので
ご覧いただいてMichnoskiさまの判断を聞かせてください、ウーンでもやはり違うだろうな。
     

kahohira #- | URL | 2013/12/10 04:33 [edit]

kahohiraさま

コメント、いつもありがとうございます。
この卵殻手の蓋碗、二客で80ドルしなかったと思いますよ。
理由は忘れましたが、唐物として出品されていたのかもしれません。
海外では平戸の細工物コレクターが多いので
エッグシェルは案外手がつかないことが多いと思いますよ。

Kahohiraさまも卵殻手をお持ちですか?
光に透かすと底が見えるなら、平戸かも。
実は、明治時代以降は、瀬戸、横浜、九谷なども
卵殻手の輸出カップを結構だしています。底にゲイシャの顔などが
あれば瀬戸か横浜系みたいです。
色絵であれば、絵付けの感じで、九谷か有田(三川内ものに有田で絵付けしたもの)だと思います。九谷は大体銘が書いているものが多いようです。
Kahohira様のアップデート楽しみにしています。

やっぱり平戸は良いですよね~~v-238

Michnoski #- | URL | 2013/12/10 14:38 [edit]

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