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肥前陶磁器あれこれ~

オールド香蘭社、オールド深川、古伊万里、平戸焼などを集めています。

 

長崎螺鈿と蔵春亭三保 ~Sweetmeat Dishes~ 

今日は非常に珍しい長崎螺鈿と幕末・有田の蔵春亭三保製オードブルのセットを
紹介しましょう。

非常に長崎らしい、でも今日なかなかお目にかかれない逸品です。

raden 1

長崎螺鈿は、江戸時代長崎で造られた漆器のことです。
欧米では、磁器と言えばチャイナ、漆器といえばジャパンと
呼ばれると言いますが、アメリカで漆器をジャパンというのは
あまり聞いたことがありません。

raden 4

漆器は日本だけでなく中国にももちろんありますが、
所謂金をあしらった蒔絵はやはり日本を代表する美術工芸品と言えるでしょう。
余談ですが、先日ゲティ美術館に行った時、マリーアントワネットが愛した日本漆器という
小さい展示会をやっていました。ヴェルサイユのマリーアントワネットの部屋にあった
コレクションを集めたものですが、素晴らしい内容でした。

raden 5

同じ漆器細工でも長崎螺鈿は中国の文化に影響をうけたものです。
螺鈿とは、貝殻や琥珀、べっ甲などを漆器に合わせ装飾したものですが
もとは中国のもので、この長崎螺鈿も歴史を紐解けば
17世紀ごろ、中国(明)の職人に日本人が教わったのがはじまりだそうです。

このあたりの漆器細工の好みの違いも、京都などの文化と一線を画し
大陸の影響を大いに受けた長崎ならではだと言えるでしょう。

19世紀には、長崎螺鈿は中国のものを好む西洋人向けに作られ
ヨーロッパへ多く輸出されました。

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この螺鈿の図柄も日本というよりむしろ中国的ですね。
このようにどことなく大陸的ながら日本製のハイブリッドな図柄は
当時の長崎文化の様相を反映していると思います。

raden 7

長崎文化は日本・中国・オランダを混ぜ合わせた和華蘭(わからん)文化などと
言われます。
長崎派の南画なども、長崎在住の画家または京都などから長崎にやってきて遊んだ画家たちが
中国人や黄檗宗の僧から影響を受けたものです。当時の長崎ではこのようなハイブリッドな文化が
新進そして独自の画風として大いにもてはやされました。

このような文化のトレンドは当然、長崎南画の分野だけでなく螺鈿の図柄などにも影響しました。
長崎南画の大家とも言える崎陽三筆が活躍した幕末の長崎で、このような図柄の螺鈿が
輸出有田磁器と共に海外へ輸出されたのは至極当然のことでした。

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蒔絵と違い、色とりどり華やかです。

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raden 10

長崎螺鈿が幕末に多く造られたにも拘わらず
今日美術館以外でほどんどお目にかかれないのには
いくつか理由があります。

最大の問題は、長崎螺鈿が有田磁器同様この時期外貨を稼ぐ目的として
輸出されたことにあります。
つまり、長崎螺鈿はそのほとんどがイギリスまたはオランダにむけ
輸出されたので、長崎の旧家などを除いてほとんど国内のみでなく海外にも
残っていないわけです。
漆器は非常に傷みやすいので、欧米人には手入れをするのは
無理だったのでしょうね。

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梅の花に雉か?

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蓋の上下も、ちゃんと図柄が合わせてあります。
保管状況が良ければ、かなりの良品だったことでしょう。

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さて、お楽しみはこれからだ(笑)。
中を開けてみると、蔵春亭三保によるオードブル皿が組み合わせて
入っています。

器の図柄が幕末時のものであることは明白ですが
興味深いのはこの丸盆に入ったオードブル皿そのもの。

実はこのオードブル皿は、西洋ではSweetmeat dishといいます。
ミートといっても肉が入っていたのではなく、いろんなデザートを飾る
飾り皿だったわけです。
中国(清)からの輸出品は、ヨーロッパで大いにもてはやされました。

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驚くなかれ。和華蘭文化の栄えた長崎でも、この手の器は
卓袱料理を彩るのに使われます。

このオードブル皿は、主に関西から西で見かけるものだそうで
東京のあたりやそれ以東ではあまり知られていないそうです。

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器の裏には、蔵春亭三保の銘が。

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遠目にはわかりませんが、実はこの中心の皿がイギリスから送られた時
包装不備のため割れてしまいました。

オイ!イギリス人!包装代けちるのいいかげんにしろっ!と
憤死寸前の相方。

こういうことがあるのは、今回が初めてではないんですよね。
前回相方が購入した古伊万里の八角皿(しかも透かし彫りが入っている!)は
ボコボコの段ボールにくるまれて送られてきました。もちろん皿は割れていました。
相方怒り狂うの巻。
そりゃそーだ。この皿、ヨーロッパの文献の8割に
必ず掲載されている有名なものだったんですよねぇ・・・・゚・(つД`)・゚・

ここだけの話、イギリス人包装代けちるんだよねぇ。
むかつくぜっ!o(o・`з・´o)ノ

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とはいえ、覆水盆に返らず。

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こぼれたミルクを嘆いても無駄だ!
(和訳ってどうしてあんなに変なのでしょう?(´∀`σ)σ

raden 20

まぁ、存在数が圧倒的に少ない長崎螺鈿が手に入っただけでも
喜ぶべきなのかもしれませんね。


(おまけ)

三川内に井浦新さんが来たそうです。
長崎出身の映画監督の自伝的映画に出演するとのことです。
この映画監督といい、高田社長の長崎Vファーレンスタジアム計画といい、
長崎出身者は郷土愛が強いんですよね~。

それを記念したわけではないのですが、
長崎が日本に、いや世界に誇る三川内焼のスタバカップを
買っちゃいました。

starbucks 1

この珈琲碗、珍しい形ですね。
実は江戸時代幕末から明治にかけて平戸藩がオランダ経由で
輸出した兜型珈琲碗は、ヨーロッパで大ヒットしました。
くわしくはここでどうぞ。


この碗は、その兜型に取っ手をつけたものです。
平戸焼の歴史と三川内焼の今とがうまく出会った素敵なカップです。
制作したのは、三川内焼の窯元でも有数の名窯である嘉泉窯さんです。

starbucks 2

三川内焼は他の器と比べて値段がやや高いですが、比較してみると品質はやはり抜きんでていると
言わざるを得ません。
波佐見焼が昨今は人気ですが、三川内焼の場合たとえデザインがモダンでも
そこはかとなく気品が漂うのは、やはりその高品質のせいでしょう。

このカップ、愛用中です。
おいしいコーヒーを淹れたら、やはりカップも良いものでなくてはね。

もうすぐゴールデンウィークですね。
波佐見、有田、大川内そして三川内ともに陶器市で
大いに盛り上がってほしいですね。

あ~!陶器市いきたいのぅ~!!!( ノД`)

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Category: 古伊万里

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Comments

長崎螺鈿の丸盆の中に蔵春亭三保造銘のオードブルセットが入っているんですか!
長崎螺鈿だけでも珍しいのに、蔵春亭三保造銘のオードブルセットが中に納まっているというのは、更に珍しいですね。
丸盆の時代も、中に入っているオードブルセットの時代も一致していますし、資料的にも貴重ですね!
かつては、このようにして輸出されていたんですねえ!
素晴らしいコレクションです!

我が家にも、蔵春亭三保造銘のものが1点あります。
(拙HPの「古伊万里随想9」「古伊万里ギャラリー21」参照)

Dr.K #eXNwpwSM | URL | 2018/04/26 17:51 [edit]

Dr.K様

コメントいつもありがとうございます。
貴ブログ、大変興味深く読ませていただきました。
蔵春亭が江戸後期・幕末から明治にかけての輸出有田モノポリ商社だったのは
九州の骨董屋さんの間では常識だったのですが、まさか作者の銘だとは・・
困った骨董屋さんもいたもんですね!

貴稿によりますと、蔵春亭は樋口窯、三川内の卵殻手などに加え
柿右衛門窯も取り込んでいたんですね!勉強になりました。
柿右衛門文献を読みますと、9代はパッとしなかったようですが、
なにせ8代目の弟である実右衛門(酒柿)が
後見人だったそうなので、この酒柿のものであれば、蔵春亭銘といえど
ラッキーですね!文献にも確かにこの時代柿右衛門は海外輸出していたと
あるので気になっていました。蔵春亭経由だったんですね。

ご所有されている蔵春亭、写真で見た感じだと
卵殻手なら三川内で絵付けされたものと有田の可能性があると思いますが
あまり海外市場では見かけない図柄です。三川内っぽい上品な絵付けだと
思いました。個人的には、蔵春亭は三川内製は高品質のものが圧倒的に多い
と思います。柿右衛門系というのはどのような図柄を言われるのでしょう?
1670-1700年頃までの濁し手のリバイバルみたいなかんじですか?
気になります!v-14

Micnoski #- | URL | 2018/04/27 10:44 [edit]

拙ホームページをご覧いただきありがとうございます。

我が家の蔵春亭三保造銘のものは、平成9年に、東京で買ったものです。
当時、東京の方の骨董屋さんは、蔵春亭三保造銘のものは、作家物と思っていたんです。

私が「古伊万里随想9」で言ってる「柿右衛門系」というものは、「1670-1700年頃までの濁し手のリバイバルみたいなかんじ」の物ですね。

Dr.K #eXNwpwSM | URL | 2018/04/27 16:11 [edit]

Dr.K様

そうですか。柿右衛門系、手に入れたいです。
これまで蔵春亭、その後鑑札を手に入れた深川栄左衛門、
そして亀山焼の作品には類似性があると思っていたので、蔵春亭経由で
発注された窯元のリスト、非常に納得しました。
まだまだ勉強が必要ですv-14

Micnoski #- | URL | 2018/04/28 06:52 [edit]

Only the administrator may view.

Only the administrator may read this comment.

# |  | 2018/06/08 15:58 [edit]

そうですね~。おっしゃる通りです。
肥前磁器は日本文化の神髄であるHybridityを
表象しているシンボルだと思います。
日本遺産とかセコイことは言わないで、思い切って
世界遺産に登録するよう働きかけてほしいものです(笑)。
今日の作り手が思っている以上に、肥前磁器は歴史を通して世界を魅了してきたわけですから!(研究者の先生の話では、南アメリカでもイマリが発掘されるそうですよ!)

三川内焼のカップ、おすすめです。さすが将軍家に納めた御用窯だっただけあり
品質の高さは他の磁器の追随を許しません。
もっと知名度が上がっても良いと思うんですけどね・・・

Michnoski #- | URL | 2018/06/08 20:56 [edit]

素晴らしいコレクションですね!!

どれもこれも素晴らしいコレクションですね。
私も長崎物(平戸、亀山、鉄翁、逸雲、長与三彩など)集めてようと頑張っていましたが、無理だったのでずいぶん昔に断念しました。
今は何でも気になったものを楽しんでいますが、貴夫妻のコレクションには本当に参りました!!降参です。
さらにコレクションの充実を楽しみにしています。

toyopika #LkZag.iM | URL | 2018/06/18 03:45 [edit]

Toyopika様、

初コメント、ありがとうございます。貴ブログ、実は時々拝読しておりました。
所有されておられる平戸焼の龍と羅漢像、実は同じテーマの細工物を
一昨年購入しました。但し私のは腕が片方ないジャンクなんですが・・・
平戸焼の細工ものだと完品はなかなか手に入りませんね。
平戸焼は海外にファンが多いので、なかなか安くは手に入りませんが、
見ると買わずにはいられないんですよね~。

さて、貴ブログの亀山焼の記事、大変興味深く読みました。
おっしゃる通り、閉窯間近の亀山焼には雑器も多く含まれていたようで
所謂亀山は平戸焼や鍋島同様採算を度外視して造られた・・・などといった
言説はすでに過去のものになりつつあります。昨今平戸焼の名窯の方に
お話を伺ったところ、ご夫婦ともに、瓊浦にある亀山焼の窯を見て
「???」と思われたそうです。通常の窯場というのは風当たりの少ない
場所を選ぶのだそうですが、亀山焼の窯はそれこそ風頭公園のふもと
ですものね。
本当のところは、平戸や有田または嬉野あたりに作らせていたのではないかと思うんですが・・・実は、最近裏に亀山銘があり、表に「肥」のついた
珍妙な皿を購入しました。そういう皿があったかと思うと、素晴らしい絵付けの
手焙りなどもありますので、あちこちで用途に応じて注文していたのではないでしょうか。
邪推も過ぎますが、こうやっていろいろ皿を見ながら推理するのも
また骨董集めの醍醐味ですね!

Michnoski #- | URL | 2018/06/18 20:23 [edit]

はじめまして。

はじめまして。これは非常に素晴らしいです。こんなに凄い物、初めてみました!私のコレクションの一つに長崎螺鈿がありまして、あるコレクターの収集品をまとめて譲り受けたものを核に、たまーに自分で買い足したりしています。最近は、違う方向の物を集めていて、長崎螺鈿はしばらくご無沙汰ですが・・・今度、ゆっくりと他の収集品を拝見させてくださいね。良い物を拝見できて、勉強になりました!

蔵春亭三保のものです。
https://blogs.yahoo.co.jp/masaki1234512345/65598919.html

今後ともよろしくお願いいたします。

noki #HijuVBig | URL | 2018/06/21 06:28 [edit]

Noki様、

コメントありがとうございます。貴ブログ、もちろん存じております。
リンク先のブログを当時拝読しつつ、うらやましさに指をくわえたものです。
しかも「眼の目」のカバーにもなっていたんですね!ハイ・エンドですね~!
当時はもちろん長崎螺鈿が手に入るとは思いもしなかったのですが、
今回運よく手に入れることができました。
螺鈿の図柄の長崎南画風なところや、蔵春亭の輸出用色絵磁器など、お手持ちのものといろいろと共通点があると思います。私のものは、お手持ちの物に比べるとすこし雑な感じもしますけど・・・
こうして改めて見ると、長崎奉行と長崎警護の鍋島藩、外貨稼ぎという共通の
目的のために協力し合っていたようですね。
「長崎螺鈿×蔵春亭三保・幕末スペシャルコラボ」は幕末の長崎在住の人々が
まもなくやってくる大きな変化を十分に読み取っていた証明のようにも思えます。
貴ブログの更新、楽しみにしています。
コメント、ありがとうございました。

Michnoski #- | URL | 2018/06/21 20:55 [edit]

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