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肥前陶磁器あれこれ~

オールド香蘭社、オールド深川、古伊万里、平戸焼などを集めています。

 

古平戸・笊の細工物~Philip Cardeiro Collection~ 

あけましておめでとうございます。
といっても、もう一月も半ばを過ぎました。
まぁ、旧正月を祝うということで(笑)

年末から正月にかけて、今年は日本に里帰りして
楽しく正月を過ごしました。
恒例の諏訪神社参り(遅ればせながら長男の七五三も!)、
湯布院で温泉旅行、そして焼き物の里、有田、三川内、波佐見を周り、
佐賀城本丸見物。
長崎市内ぶらぶらでは、寺町界隈と南山手、そしてなんと
今回人生初(!)の神の島方面へも足をのばしました。
このあたりのことは、また後程旅行記という形で
詳しく紹介したいと思います。
思いがけず楽しい出会いもあり、
新春早々、良い年になりそうな予感がします。

やっぱり九州は良いところです。(^∇^)


相変わらずのんびりペースですが
いろんな肥前磁器にまつわることを書いていこうと思います。
皆様、今年もよろしくお願いします。

さて、2017年最初に紹介するのは
なんと、あの平戸焼のコレクターである故Philip Cardeiro氏の
所蔵品であった一品です。

それがこちら。
平戸焼の細工物の笊です。
素晴らしすぎます!ヽ(´∀`)ノ

ご覧あれ~!
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なんと、ほぼ実物大の磁器の笊!
土を練って、実際に笊を編んで造ってあります。
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近影。
彫ったり細工したりせず、実際に繩状に土を成形し
編んであるのが分かりますか?

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Philip Cardeiroについて少し紹介しましょう。
同氏は、アメリカ人の実業家です。
マサチューセッツ州ボストンの生まれ。
イェール大学に進学し、その後実業家として
いろいろな事業を起こしました。
まぁ、ここまではニューイングランドの裕福な家庭に
育ったイェーリーのサクセスストーリー。
ありきたりといえばありきたりですな。

おもしろいのはここからで、氏は1970年に
事業の第一線を退いてからは、もともと興味があった
東アジア(日本と中国)の磁器収集に熱中します。
コレクションは1940年頃から始まり、主に1970年頃
集中的に集められたそうです。
その質の高さたるや、欧米では
Philip Cardeiro Collection として知られ、美術館等で展示されるほど。
特に中国磁器のコレクションは特筆すべきものがあります。

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その中国磁器コレクションほどではないとしても、
氏の平戸焼コレクションもまた、海外の日本磁器ファンにとっては
かなり有名でした。
そのコレクションのほとんどは数年前まで
カリフォルニアのモントレーにある東アジア美術館に
常設展示されていたようです。

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・・・がしかし(!)、氏が2014年に亡くなってから、
そのコレクション(の少なくとも一部)がロンドンなどのオークションに
かけられたわけです。

その一部であるこの平戸焼の笊が、巡り巡って
なんとわが家へやってきました!

(^∇^)ノ いらっしゃいませ。

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骨董コレクターが亡き後、コレクションがオークションに
かけられると、骨董ファンとしてはなんとも言えない気持ちに
なります。
良いものが自分のコレクションに加わり嬉しい反面、
骨董コレクションの末路を見るようでもあります・・・・

自分の子供が骨董を二束三文で売り飛ばさないように
今から日本の磁器の良さを教え込まねばなりませんなぁ・・・( ノД`)

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さて、Philip Cardeiroのコレクションとして所蔵され、
出版本にまで紹介されている平戸焼の笊ですが、
実はこの作品には二つ問題点があります。

まず、裏に銘があるにも拘わらず
誰の作なのかはっきりしないこと。

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裏銘に「光若」(こうじゃく)と彫ってあるのが
見えますか?

平戸焼はもともと平戸松浦家の藩窯であり、
将軍家に器を献上するための官窯だったので
江戸時代に作られたものの多くには銘がほとんど
ありません。

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幕末以降(といってもほとんどは明治以降)に作られた
平戸焼に作者銘がありますが、有田などに比べると
かなり少ないようです。

平戸焼の年代のわかりづらさというのは
記録が少ないこと、銘がはいっていないこと、
そして作品の完成度がどの時代にあっても高いことに
起因していると思います。

残念ながら平戸焼には
有田の柴田コレクションのような資料がありません。
ですから、絵付けを見て、「これは延宝様式だ」とか
「1750年頃の有田はパッとしないなぁ」とかいう
判断がしにくいわけです。

それに加えて、平戸焼の研究が鍋島や有田磁器に比べて
ほとんどされていないことも原因の一つだと思われます。

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実は今回、平戸焼の里、三川内へ行ってきまして、
そこにある平戸焼ギャラリー、さるのあしあとさんを訪ねました。
その時の様子はこちらにあります。
詳しくは後程旅行記で述べたいと思いますが、
この日はなんとギャラリーの猿彦さんの御紹介により
三川内焼の二大名窯である嘉久房窯と五光窯の窯元さんに
お話を伺うことができました。

残念ながら、お二方とも「光若」という銘はご存じなかったのですが、
五光窯の平戸藤祥さんに面白い話を聞くことができました。

氏曰く、「この笊は平戸焼ではないかも?」。w(゚o゚)w
あくまで、実物をみてみないとはっきりとは言えないと前置きされたのですが
どうも釉薬が平戸焼の使うものとは違うように見えるとのことでした。
お話によると、平戸焼はもともとは柞灰を使っており、光を当てると
表面が柑橘類のような風合いになるのだそうで、
これは中国磁器の嗜好の影響なのだそうです。しかし、昭和初期ごろから
より手軽に使える石灰釉を使うようになった為
表面がつるつるして、温かみがないのだそうです。
ただし、その違いは写真などではわからない、とのことです。

なるほど~!
こういうことは、やはり昔の磁器を研究している
作り手ならではの着眼点と言えます。
骨董というのは、知識は必要なれど
それだけではどうにもならないものですね~!
感心しきりでした。

次回帰国する時には、是非実物を見てもらいたいと思います。

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しかし、Philip Cardeiroはなぜこれを平戸だと思ったのでしょう?
海外の平戸コレクターの目からみると、これは
平戸以外にはありえないように思えます。

理由は二つ。
日本磁器だった場合、使用された陶石の特徴を
鑑みると、これだけ鋭利な造形のできるものは
網代陶石と天草陶石を混ぜた平戸以外には考えにくいことです。

九谷や有田・鍋島、薩摩、京都、そして関東地域にも細工物を作る窯は
ありますが、細工物の出来はその細工の細かさにあり
他の陶石を使用している場合、その精密度にかなり差がでるのは
明白です。九谷や有田、京都が唐子などを置物をつくっても
造形が鈍いのは使用陶石の質によるものでしょう。

磁器に限らず美術工芸品がどのように発展を遂げるかは
作り手が「何をつくりたいか」ではなく、むしろ手に入る材料を使い
「何をつくれるか」にかかっています。つまり、Affordability の問題なわけですね。
順番としては、「何が作れるか」があって、その次に「何をつくりたいか」と
なるわけです。

このような文化発生の理論に基づいて考えると
Affordability があってこそ、このように笊を実際に編んで磁器を
作るという、とんでもない遊び心が生まれたわけですね。
そしてその作品たるや、実際にモノを入れて置いておくと
「あれ?」と本物の笊に見まがうような完成度の高さなのです。

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こちらが、Philip Cardeiroの本と紹介されている磁器の笊です。
平戸焼のコレクションの一部として説明されています。

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注釈によると、Philip Cardeiroはこの作品がナンシー・シファーの
有名な「Japanese Porcelain」に万古焼(!)として紹介されていることに触れ、
「これは万古焼ではなく平戸焼の間違いである」と述べています。

でもね、これは私もCardeiro氏に全く同感です。
万古焼にも笊はあるけど、こんなに精巧なものは
無理なんだって・・・・

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骨董初心者向け本を書くシファー氏(しかも専門家とは言い難い)が
こんなことを書いていたのは、東アジア磁器コレクターであった
イェーリーのCardeiro氏には到底受け入れがたいことだったんでしょうね。

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こちらは、ナンシー・シファーの紹介したもの。
もとは、ニューポートにある骨董ディーラーのHouse of Black Ship に
あったものです。

ロードアイランドにあるニューポートは言わずと知れたペリー提督の出身地。
その昔はホワイトエスタブリッシュメントの牙城として知られ、
歴代アメリカ大統領の避暑地としても知られています。
大西洋を見下ろす丘には数多くのマンション(豪邸)が
並び、古きアメリカの全盛期はこれほどまでに
すごかったのか、と思い知らされます。

イェール大学から3時間ちょいのこの町にある骨董屋に
Cardeiro氏が夏になると足繫く通ったのは容易に想像がつきます。

ちなみに同骨董屋では、過去に古平戸・染付波千鳥文蓋物を購入しております。

普通じゃない平戸焼を扱う店だったのでしょうか・・?
時代はどちらも、19世紀半ばから後半にかけて。
笊については、氏の見立てではこの当時平戸焼が作っていた
実験的な作品の一つなのだそうです。

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さて最後になりましたが、もしこの笊が平戸でない場合の
(今のところ考えられる)唯一の可能性について触れておきましょう。

それは、中国にあって細工物を得意とする徳化窯です。
先に述べたAffordability と同じ理屈なのですが、
この窯も、その使用陶石の性質のせいか
精巧な細工物を得意とします。
この笊のようなクオリティを作れる窯は平戸以外だと
世界広しといえど、おそらく中国の徳化ぐらいではないでしょうか。
但し、徳化窯というのは所詮焼き物を作っていた窯に過ぎず、
文化レベルが高く教養のある松浦藩に仕えいた平戸焼とは
その作風や職人の遊び心や自由さが異なります。

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まぁ、とりあえず今のところはイェールのよしみということで
東アジア陶磁器コレクターであり、スペシャリストでもある
Cardeiro氏の意見を尊重し、この笊は平戸焼であるということにしましょう(笑)

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それにしても万古焼とは・・・・
血迷ったか?ナンシー・シファー???

もしこの笊について異なるご意見がありましたら
教えてくださいね。

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Category: 平戸焼

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Comments

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# |  | 2017/01/19 05:34 [edit]

T様

コメントありがとうございました!
そうですね。平戸焼の技術は日本でも
最高のものだと思います。微力ではありますが
平戸焼の素晴らしさをいろんな方々に
知っていただけるように、作品を紹介しながら
三川内を応援したいと思います!

Michnoski #- | URL | 2017/01/20 12:33 [edit]

高いですね。

さるのあしあと、値段が高いですね。オーナーがネットて安く仕入れているらしく、また高く値段を釣り上げてる感じでした。

ところで旦那さん #tbP3RbY6 | URL | 2017/01/26 07:03 [edit]

返信うっかりしていました。

ははは。そうですね~。
値段が安いと、ギャラリーで良いものを
見せてもらい、そして三川内焼を買う楽しみもできるので
もっと人が訪れるかもしれませんね。

昨今は、波佐見の勢いがすごいですが
人気の一つは、やはり値段が手ごろなことが
大きいような気がしました。波佐見のことも
ブログに書こうと思っていますが
仕事遅いですねぇ(汗)

Michnoski #- | URL | 2017/01/29 18:09 [edit]

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