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肥前陶磁器あれこれ~

オールド香蘭社、オールド深川、古伊万里、平戸焼などを集めています。

 

平戸焼の贋作  ~平戸焼 染付唐子抱犬水注~ 

先日西海岸に引っ越しましたが、一年ぶりに箱につめていたやきものを
取り出しました。

この輸出平戸の染付唐子抱犬水注もその一つ。

プチプチを開けた瞬間、「お~!元気だった~?」と
つい語りかけたりして。

boy dog 1

さて、この染付唐子が子犬を抱いた水注、海外の平戸コレクターにとっては
マストアイテム、平戸ファンであれば是非持っておきたい(おくべき?)一品です。

長崎歴史文化博物館や三川内産業会館などが所蔵しているこのポット、
海外では、日本磁器を扱う骨董屋でたま~に見かけることも。

boy dog 2

マストアイテムといわれてもおかしくない、海外でよく見かけるこの水注ですが・・・
問題があるのです。

それは・・・・値段が高いんですよ

この水注に限って言うと、通常完品は望めません。
水注の蓋の部分が無くなっている物が多く、それでも値段は$1000くらいから・・・

これってどんなもんでしょう?

boy dog 3

過去、骨董屋で何度も悩みながらも、ついに購入することはありませんでした。

でもある時、ついにイギリスで骨董商から購入。お値段も思っていたよりお安く手に入りました。
東洋磁器専門の骨董商ではなかったので、てっきり唐物だと思っていたのだそうです。
中国磁器に大きな影響を受けた平戸ならでは、ですね。

唐子だしなぁ・・・・

ラッキー(かな?)

boy dog 4

時代は、明治後期・大正あたりではないでしょうか。

この子犬の口から水がでてくるようになっています。
口から水をだす姿がなかなかキュートです。

boy dog 5

輸出平戸のやきものをならべてみるとわかるのですが、
御用窯だった平戸も、残念ながら時代がたつにつれ
その質はだんだん落ちてきます。

明治後期、大正の物は、以前ほど精巧な造りではありませんが
それでも細工物としては、まだ他のやきものとくらべると一定のレベルを保っていると言えます。
この唐子抱犬水注も、よく似たものが九谷から色絵で出ています。
九谷の絵付けは美しいのですが、細工物としてみたときに細かな部分に差が出ます。
(目が描いてあるのが九谷、彫ってあるのが平戸)

それにしても、平戸焼きの特徴である細工物の人物の顔、有田などのものと比べると
かなり異なるのがわかりますか?

有田のものに比べると、人物の顔が妙にまるっこくて、よく言えば愛嬌がある顔です。
悪く言えば田舎風ですね。以前紹介した平戸焼の人魚婦人童子像と共通点があると思います。

唐子の絵にも言える事ですが、平戸焼の細工物や絵付けは、
日本的な美的感覚を反映しているというより
庶民的な顔立ちの特徴をよく捉えていると思います。
平たく言うと、なんというか、田舎の小僧やおばちゃん風ですね。

boy dog 6

犬を大事そうに抱えています。

boy dog 7

後ろから。

boy dog 8

この唐子の髷の部分が蓋になっているんですが、通常この水注は
この蓋の部分が消失しているものが多いです。
ちなみに、蓋のパターンは私が知る限り二種類。
一つはこの写真のように髷が蓋になっているもの、
もうひとつは、後頭部を円形に切り取って蓋にしたもの。(蓋が大きい)

個人的には、この蓋に2万から3万くらいの値打ちがあるのでは、と
思っています(笑)

boy dog 9

boy dog 10

裏。

天草陶石に含まれる鉛の成分が
このような赤い色として出てくるのだそうです。

boy dog 11

さて、この水注に関してもう一つ興味深い話を。

2年ほど前、行きつけの長崎の某骨董屋さんで亀山焼に詳しい方を
紹介してもらい、話を聞くことができました。
この老紳士、亀山や平戸のコレクターなのだそうで
美術館等にも所蔵されているものを貸し出すこともあるのだそう。

趣味でコレクションされているので、やきものの学術的側面にご興味があられるようで
その知識の豊富なこと。

boy dog 12

その方が、私の持っているこの水注の写真を見て、こんな面白い話を。

数年前、九州北部でこの水注の贋作が出回ったのだそうです。
贋作と言うと聞こえが悪いですね。たぶん造った側にすると復刻版のつもり
だったのでしょうけどね。

さて、贋作を造らせたのは、平戸焼にくわしい方なら知っているであろう某氏。
うわさによると、国内で贋作(復刻版?)をオーダーし、骨董の市場にだしたところ
地元の骨董屋が我先にと買い求め、骨董として売りさばいたのだとか。

骨董屋のおばちゃん「ヒェ~、そげんことのあったとですか!」

私 「ヒェ~・・・・・・・・・・? あれ?でもなんだか納得。」

ダンナ 「(しらっとして)ナットクだな・・・・」

boy dog 13

贋作としりつつそれを買い上げて売った骨董屋さんたちの道徳観念も
問題だと思います。人によっては、骨董を買うというのは真贋を見分けるゲームのような
ものだと言う人もいるでしょう。でも、このような商売は骨董に興味のある人たちを遠ざけることにも
なりかねません。

まぁ、それはさておき、私にとって最も興味深かったのは
この贋作が所謂メイドインチャイナではなかったことです。

平戸のような細工物の贋作となると、中国広しといえども、どこででも作れるわけではありません。
中国にもこのような細工物ばかりをつくる窯があり(福建近郊)、この地域では当然細工に適した陶石が
採れるわけです。ここで平戸の贋作を造ろうと思えば造れるんでしょうけど
私はみたことがありません。日本国内で平戸の贋作って出回っているものなのでしょうか?

私が購入するのはヨーロッパかアメリカですので、カリフォルニアのあこぎな
骨董商でもない限り、中国製をわざわざヨーロッパで、しかも唐物(平戸はよく間違われる)として
売ることは常識の範囲ではないと思います。

では、古伊万里や鍋島系に比べ、平戸の贋作がそうたくさん出回らないのはなぜなのでしょう?

推測ですが・・・・

考えられる理由の一つとして、平戸は古伊万里や鍋島に比べて知名度が低いこと。
日本で骨董屋さんと話すと、まずなんでも中国製の贋作と疑われるようですが
割りに合わない贋作が中国で造られる確立はあんがい低いと思います。
文化的資本に象徴的価値が備わっていない場合、これはしかたがないことです。

もうひとつ考えられるのは、中国で平戸の贋作をつくることそのものに意味があまりないこと。
平戸は御用窯ですが、鍋島に比べ知名度が低いことに加え、平戸焼そのものが中国の影響を強く受けています。
自分達がもつ磁器によく似たもので、鍋島ほど知名度がないものを贋作として造る意味はないのでしょう。
日本人が、韓国製のかっぱえびせんのコピー商品をつくらないのと同じ、といったら平戸ファンに怒られますが、
中国人の感覚ではそんなものなのかも。

おまけに、今海外の骨董市場では、バブル期の古伊万里のように中国の骨董の値が高騰していますので
中国人にするとチャイナの模倣を造ったほうが金になるのかもしれません。
そう考えると、古伊万里や鍋島の模倣品は日本市場向け、
あるいは海外の一部のコレクターむけのものと言えるでしょう。

平戸の贋作を造ろうとした場合、それなりに高い技術が必要ですし、染付の絵も
うさぎや亀や南蛮人を描けばよいというものではありませんものね。
古伊万里などの複雑なデザインと異なり、平戸の写実的な図はごまかしがききにくいことも
理由の一つなのかもしれません。

まぁ、いろいろ描きましたが、平戸はやっぱり魅力的ですね。
贋作などを掴むことがないよう気をつけねばなりません。

最後に・・・・

輸出平戸の水注、その殆どはイギリスから出てきます。
平戸の細工物の水注が、イギリスのアフタヌーン・ティーを彩ったのだと思うと
嬉しくなります。

ビバ!平戸!!!

boy dog 14


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Category: 平戸焼

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日本の夏はあつうござんした・・・  (明治・深川製磁 染付透彫菖蒲文香炉) 

今年の夏は暑かったですね~。
7月の中旬から8月上旬にかけて日本へ里帰りをしていましたが
日本の夏の暑かったこと!

着いた当初は、まだ梅雨明けもしていなかったので
そうでもなかったんですが、梅雨明けしてからの暑さといったら・・・
伊万里の大川内山に行ったときは、さすがにめまいがして
ろくに窯元めぐりもできませんでした・・・

さて、里帰りではいろんな方に肥前磁器についてのお話を伺う事ができました。

こちらの宿題はさておき(←夏休みの宿題を8月30日にやるタイプ)、今日は深川忠次時代の
明治後期の透かし彫り菖蒲図香炉を紹介したいと思います。

Fukagawa koro 1

カリフォルニアの骨董商から、セットで買いました。
完品です。

fukagawa koro 2

特筆すべきは、菖蒲の透かし彫りです。
香炉の外側は、菖蒲の花と葉の部分が透かし彫りしてあり、
内部は二重構造となっています。

fukagawa koro 3

細部にわたるまで彫りこんであり、岩の部分の凹凸まで細工しています。

fukagawa koro 4

内部はこのようになっています。

ちなみに、この二重構造(外側透かし彫り)は染付龍透彫龍文酒注と基本的に同じです。

外側に透かし彫りをした容器の中に筒を入れたもので、
平戸焼の透かし彫りをした高級磁器に見られるものです。

fukagawa koro 6

さて、先に紹介したLouis Lawrence の著書Prince of Porcelainによると、
廃藩置県以後、松浦藩の後ろ盾を失った平戸焼の職人は
各自窯を開いたりしたようですが、その中には有田の香蘭社や
深川製磁などと協力して作品を世に出した職人もいたそうです。
これらの会社が発表した明治の名品には明らかに有田・平戸の合作のものも多かったようで、
ローレンス氏のこの記述が正しければ、平戸焼の高い技術と伝統を引き継いだのは
皮肉なことに過去平戸の競争相手であった有田の名門窯だったわけです。

fukagawa koro 7

このような歴史の中で起こった有田・三川内のハイブリッドな性質の好みはともかく、
私のような平戸・深川ファンにとっては、このような合作は、平戸の高い技術と深川忠次の
デザインのセンスがひとつになって生まれた結晶でありまして、早い話、おいしいわけです。

fukagawa koro 8

一粒で二度おいしい。(?)

fukagawa koro 9

蓋を取ってみました。
Double Barrel.

fukagawa koro 10

細部まで凝りに凝っています。

fukagawa koro 11

鼎。

fukagawa koro 12

蓋の裏に、富士流水。
深川と書いておりませんが、この銘は明治後期のもののようです。

余談ですが、この明治後期に作られたものの中には秀作が結構あります。
香蘭社も同様です。明治後期には、クオリティの高いものが多く作られました。

fukagawa koro 13

香をいれてみようかなぁ。

fukagawa koro 14

さて、この夏、有田のチャイナオンザパークに遊びに行きました。

chuji kan

ここでアウトレットをぶらっとして、忠次館で深川忠次の名品や復刻版などを見て
その値段にビックリしつつ、二階のティールームでお茶を飲むのが定番です。

今回、忠次館内にこの香炉の復刻版が置いてありました。
復刻版は、菖蒲の花に薄紫の色がついていて非常に美しいです。

店員さんとの会話の中で、「実はこの香炉を対で持っていますが、染付ですよ」というと
店員さん曰く、「あ、デザインでは花に色がついていますので、色がついていないのなら傷物かなにかでしょうか?」と
言われ

「・・・・・・・」
(ちがう~!!!)

と固まってしまいましたが・・・・・

まぁねぇ・・・ 

なんだかなぁ・・・・

ま、いいんですけどね。

その後、忠次館の二階のティールームでお茶しました。

ここで使用される器はすべて深川製磁のものです。
こんな風に出てくると、ついつい買いたくなってしまいます。

モダンなカップ。
横には干支の羊。

この日は暑かったので、アイスコーヒー。

chuji kan 3

チョコレートケーキ。

chuji kan 2

ここ数年、深川製磁はイタリアなどのデザイナーを組んだりして、
モダンなものを作ったりしています。

なかなかセンスがよいと思いますが、やっぱり深川の基本である忠次の図案帳のようなものを
もっとたくさん出してほしいですね~。

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Category: 深川忠次

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