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肥前陶磁器あれこれ~

オールド香蘭社、オールド深川、古伊万里、平戸焼などを集めています。

 

刷り込みと情熱と ~私は如何にして平戸焼を愛するようになったか~ 

さて、スタンリー・キューブリックのあの映画が好きかどうかはともかく・・・・

骨董を愛する人は誰でも、「私は如何にして〇〇を愛するようになったか」という
内に秘めた物語を持っているはず。

このブログを始めた頃は、深川製磁や香蘭社の明治時代の器を集めるのに夢中でした。
最初に書いたとおり、もともと骨董に興味をもったのは、長崎のとある骨董商から買った
牡丹の描かれた大きな染付の花瓶の出所が知りたいという思いからでした。

でも時間が経つにつれて興味の対象も変わり、なぜか平戸焼に心が傾くようになりました。

思い起こせば、我が家では、小さい頃から深川製磁や香蘭社などの良い器を日常的に使っていました。
金持ちだったわけではありませんが、焼物の街からそう遠くないところに住んでいたので
自然よいものを使う機会が多かったわけです。
焼物の街に出かけてはいろんな器を買い求めた両親が、その町の焼物を褒めながらも
最後にいう台詞は決まっていました。

「有田も波佐見も良いけれど、一番完成度が高くて美しいのは三川内やろうね」

当時、子供の私は、「ふ~ん?そうなのか~」などと思ったものでした。

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あれから何年も経ち、そのうち日本を離れてアメリカに住むようになりました。
とある偶然から、有田の深川製磁と香蘭社の器に心魅かれ
帰国するたびに、足しげく長崎の老舗の骨董屋さんに通い
花瓶やお皿を買い求めるようになったわけです。

ここの骨董屋のご主人(おばちゃんですが)も深川と香蘭社が好きなのだそうで
仕入先で深川系を見つけると「なにがなんでも買わんば気がすまん」のだそうです。

しかしある日、彼女のお父さんが始めた骨董業の話をしていたとき
思わぬ言葉が・・・・

この長崎でも老舗と言われる有名な骨董屋さんは
もともと今のご主人のお父さんが始めたそうですが
そのお父さんが常々こんなことを言っていたそうです。

「(鍋島を除けば)一番良いのは平戸焼。
平戸は150年前だろうと200年前だろうと、今窯から出てきたばかりのように
美しい。この洗練された平戸焼に比べれば古伊万里は
まるで田舎娘が着飾ったのを見ている様だ。」と。

なんと厳しいご意見・・・

hirado lion 2

最初に聞いた時は、「え~、そんなものかなぁ?」と思いました。

ですが、こんな会話を交わした後、改めて平戸焼を手に取ると、どうでしょう。
確かに、今まさに窯から出てきたような質感なのです。
有田のものに比べると、陶石の違いからでしょうか、
白磁はなんとも美しく、絵付けも中国のものをお手本にしたためか
繊細なわけです。

ご主人のお父さんが言ったように、平戸の高貴さに比べると
伊万里は下品な田舎娘のようだ、というのもあながちおかしな比喩とも思えません。
(古伊万里ファンの方、ゴメンナサイ)

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こうして、平戸焼の素晴らしさについて刷り込まれた私ですが
この嗜好は海外生活でさらに加速することに・・・。

欧米の美術館には、元禄時代の古伊万里、柿右衛門、鍋島藩窯のもの、
そして平戸焼が必ず飾ってあります。
日本では、平戸焼(三川内)は伊万里などと一緒にされてしまうこともあるそうですが
海外では、伊万里はImari、鍋島はNabeshima、そして平戸はHirado ときちんと分けてあります。
Hiradoという名前そのものがブランドなわけです。

それもそのはず、欧米の美術館の学術員や学者たちは
その著書の中で、皆口をそろえて、「江戸時代に造られた器で、一貫して質が高いものは
平戸焼である」と述べています。
まぁ、御用窯でしたので質の高さは当然でしょうけど、一貫して高かった、というのが
有田と異なるところなのでしょう。

もちろん鍋島は質が高いのは間違いないのですが、
なにしろ出回った数が少ないこと(当然ですね)、
そして絵付けが江戸時代の日本的な美的感覚を反映していることから
欧米人にとっては、チャイナと呼応するような趣の平戸に軍配が上がったのかな、と思います。

そんなこんなで、元々刷り込まれていたことに加え、
経験や知識による裏づけ等々で、ついに平戸焼を収集したい
情熱にかられるようになったわけです。ハイ。

まぁ、たいした理由ではないですね・・・・

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さて、三川内といえば唐子の絵付けが有名です。
しかしみなさんの中には、あの唐子のどこがいいの?と
思う方もいらっしゃるかもしれません。

私もそんな一人で、正直「平戸雅松」の湯飲みを見ても、
良いのはわかるけど、好きか?と聞かれると
「う~む」と思ってしまうわけです。

でも、平戸焼は唐子の絵付けのように画一化されただけのものではありません。
ひねりもの、といわれる細工物はこのブログでも度々紹介していますが
本当に遊び心があって、飾っておいても楽しいものばかりです。

平戸のコレクターとしてはまだまだですが、このブログでは細工物を中心に
紹介して、平戸焼の素晴らしさをいろんな人に知ってもらえれば、と思います。

勝手に「平戸焼人気推進委員会」発足!

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前置きが長くなりましたが、今日紹介するのは
明治時代(中期から後期)の輸出平戸の染付唐獅子の置物です。
唐獅子の置物は、江戸時代から、明治、大正にわたって造られ、
特に明治以降は大量生産され、主にイギリスに輸出されました。

平戸焼を語る上で外せないことの一つに、細工物の目のつくりがあります。

通常、古伊万里や九谷焼きの置物では、目はエナメルや呉須で描かれていますが
平戸の場合、陶石の質のせいか、目の細工がきちんとなされ
大抵は目の玉まで彫ってあり、そこに呉須をちょっと入れています。
早い話、顔のつくりがきちんと細工してあるわけです。

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このあたりの造形の確かさ、質へのこだわりは平戸ならではですね。
独特なつくりなので、贋作はあまり出回っていないと思います。
造れるとしたら、現在の三川内くらいでしょう。

ちなみに、時々ネットオークションで九谷の染付唐獅子の置物を平戸として
出品しているディーラーがいますね。
平戸ファンの私などは、こういうのをみるとかなりムッとしてしまいます。

九谷は九谷で素晴らしいと思いますが、細工物を比べた時に
平戸とはその精巧さに明らかに違いがあります。
このあたりの差異は、使用陶石の質によるものだと思うので
仕方がないと思います。
網代の陶石でないと、かなり細かいところまでは造れないのでしょう。

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この唐獅子ですが、もとは江戸時代に造られていました。
江戸時代の唐獅子は、数が少なくあまりお目にかかれません。
通常、2頭以上(7頭までのものを見たことがあります)の唐獅子が
じゃれあっています。
その造りときたら、まるで生き物のような躍動感があります。
さすが、御用窯!

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明治時代に入ると、唐獅子は大量生産され輸出されました。
おそらく型にはめて造ったのだと思いますが、尻尾や鬣などは
きちんと手が入っているようです。
この頃になると、躍動感のある置物というよりも
ただの静止した唐獅子像が多くなります。

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凛々しい後姿。

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それにしても、唐獅子の置物はイギリスでの発注がなぜこんなに多かったのでしょう。

19世紀のイギリスといえば、産業革命や植民地支配で経済的にも文化的にも
繁栄していました。

平戸の置物はきっとめずらしいオリエンタルの小物として
イギリスの中流・上流家庭の書斎を飾ったのでしょうね。

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下から見た図

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魚拓ではありませんが、受験生用キットカット(ちなみにアメリカでの発音はキットキャット)を
並べてみました。

結構小さい置物です。
とてもかわいらしいです。

余談ですが、アメリカ人の生徒に日本製のキットカットを食べさせたら
「日本のは味が濃い!カカオの量が多い!さすが日本だ!」と言っていました。

ほんとかいな?  

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こちらは、以前紹介した人魚の置物と並べてみました。
唐獅子が意外と小さいのがおわかりいただけるでしょうか?

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最後に、この平戸の唐獅子はよく本などに載っています。

Prince of Porcelain の表紙にもなっていましが、こちらは大正時代に造られたもので
呉須の色が濃いです。そして、サイズもかなり大きめ。

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大英博物館から出版されている(現在は絶版)Japanese Art-Masterpieces in the Brisith Museum にも
日本の陶磁器は、鍋島、輸出古伊万里、元禄伊万里、柿右衛門そして平戸のものが紹介
されています。

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平戸のページはこちら。

実はこの小さい毬で遊ぶ唐獅子(大正期)を持っていますので
今回一緒に紹介しようと思ったのですが、残念ながらどのダンボールに入っているのか
わかりませんでした。

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唐獅子チャン、かわいいなぁ~

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Category: 平戸焼

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色絵花草瓶文碗 輸出伊万里 カップとソーサー 

前回の出島、もとい“デシマ”に続き、今回も輸出古伊万里を紹介したいと思います。

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染錦と呼ばれる、いわゆる古伊万里様式はVOC(東インド会社)を通して
ヨーロッパへと輸出され、西洋に“Imari”の名前を広めることになりました。

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この絵付け、所謂 ”輸出古伊万里”ですね。
染付の上に、赤と金で上絵付けしております。

製作された時代は元禄、と言いたいところですが、おそらくもうちょっと新しいものだと思います。
たぶん、1700-1720年頃のものでしょう。

まず元禄時代のものと比べると、呉須の色合いが異なります。
実は最近、元禄時代のカップとソーサーを手に入れたのですが、
呉須を比べた時に、元禄時代のもののほうが
なんとも澄みきった色をしています。
過去にこの時代の国内用色絵皿輸出用水差、そして輸出用染付芙蓉手皿などを
このブログで紹介しました。どれも同じような発色です。
これらの元禄時代に造られたものと比べると、こちらのカップの
呉須はちょっと暗くて濁ったような色合いです。

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呉須の色合いだけでなく、違いはその質感にも表れています。
元禄時代に造られたカップは、手に取らずとも質の高さがわかるほど秀逸です。
300年以上も昔のものなのに、手に取ると今まさに窯から出てきたような質感。
(いや、先月中国のどこかの窯から出てきた贋作とは違いますぜ・・・)

呉須の色合いや質感などは、他の追随を許しません。
肥前陶磁器の長い歴史の中でも、元禄伊万里とよばれるこの時代に造られた
器はなにやら神がかった代物です。

その元禄時代からほんの2-30年後に造られた輸出用カップはまぁ、凡庸。
ご覧の通りです。

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・・・とさんざんけなしてみましたが、そうは言っても
このカップとソーサーだって、ヨーロッパの裕福な人たちの
食卓を彩ってきたんでしょうけどね・・・・

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このカップの出所は、もちろんオランダです。
輸出古伊万里は、基本オランダから出てくるものですが、
時々300年物の古いものでも、イギリスから出てくることがあります。
出てくる先は殆ど全てが、イギリスの港町。

VOCがスパイスなどを運んでヨーロッパへ戻ったときに
それをイギリスなどに売りさばいていたそうです。

スパイスなどとともに、イマリの食器は良く売れたのだそうですよ。

このような事情から、この手の骨董は殆どがアムステルダム近辺の都市と
その対岸のイギリスの港町から出てきます。

値段はいろいろですが、これくらいの小さなカップとソーサーは
かなり出回っていたようで、今日でも骨董屋でよくみかけます。

値段も、まぁそんなに高くはありません。

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実は、この冬日本に里帰りの折に
念願の有田にある源右衛門窯を訪れ、
古伊万里資料館を見せてもらいました。

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このブログを読んでくださる皆さんがご存知かはわかりませんが、
有田の大きな窯元はそれぞれが、古陶磁を集めた小さな美術館をもっています。
有田に行った時は、この古陶磁美術館を訪ね歩くのが楽しみの一つなのです。

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今回伺ったのは、源右衛門窯さんでした。評判どおり、そのアーカイブの内容の素晴らしいこと!
ここにあるものを展示するだけで、大都市の美術館で古伊万里の展示会ができるのでは
ないでしょうか?

そのコレクションの多くは、NYのメトロポリタンで見かけたものばかりでした。

そして、この小さなカップとソーサーと良く似たものも、隅のほうに飾ってありましたよ。
源右衛門コレクションの中では、あまり重要なものではなさそうでしたが
見つけたときは、なんとなく嬉しかったです。

おお!あの源右衛門窯の資料館にあるものと同じようなものが家にもある!

・・・というあの興奮。

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ちなみに、源右衛門窯のアーカイブにはあの出島皿もありましたよ。

・・・すごいなぁ・・・・源右衛門窯・・・・・

皆さんも、もし有田に行く機会があったら、ぜひ源右衛門窯にも足をお運びになっては
いかがでしょう?

資料館だけでなく、もちろんお店のほうも素晴らしい食器がたくさん置いていますよ。

見ていると、買いたくなってしまいます・・・・

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ちなみに、そのあと深川製磁にいったら、こちらにもアーカイブがあったので
見せてもらえないか、頼んでみました。

すると・・・・

予約をしないとできません

とのこと。

帰国までまだ時間があったので、また有田にきてもいいかな、と思い

「どれくらい前に予約すればいいですか?」と聞くと

「え?ちょっとまってください・・・」といわれ

「たぶん・・・2週間くらい前です・・・」と言われました。

っていうか、たぶん2週間って・・・なんじゃそら?

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普段から、こういう要請がないのが ありあり。
断るにしても、こういうのはちょっとなぁ・・・・・

余計なお世話かもしれませんが、有田の深川本店まで買い物に来る人の中には
旅行者も結構多いと思うんですが、そういう深川ファンのためにも
アーカイブは気安く見せるようにしたほうが良いのではないかな、と思います。

アーカイブをみると、ますます作品に見せられて、売り上げにも貢献すると思うんだけどなぁ。

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念のために言っておくと、深川本店はこんなかんじでしたが
西有田にあるチャイナオンザパークは、同じ深川製磁でもすごく感じがいいですよ。

いついっても、店員さんは感じが良くて、社員教育が行き届いているな、と感心します。

チャイナオンザパークには、深川忠次時代の物もディスプレイしてあって
お薦めです。器を堪能したら、二階でお茶でもしてはいかがでしょう?

と、なんの話をしているんだか・・・・・

ああ、輸出古伊万里でしたね。

いや、まぁ古伊万里収集も楽しいですが、私は平戸ファンなので
平戸の話じゃないと、イマイチ乗ってこないなぁ・・・・

・・・・というわけで、次回は古平戸の細工物を紹介します。

最近平戸買い物ラッシュなんでね・・・・・


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Category: 古伊万里

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