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肥前陶磁器あれこれ~

オールド香蘭社、オールド深川、古伊万里、平戸焼などを集めています。

 

香蘭社 色絵黒外濃竹林七賢人図花瓶(明治後期) 

Famille という言葉をご存知でしょうか?

中国の清の時代に流行った、エナメルで塗りこんだ素地に
絵をつける食器などのことです。
この手法は清王朝初期の康熙(四代目の皇帝)時代から始まり、
清時代を通して非常に人気がありました。

皇帝の色である黄色のfamilleも素晴らしいのですが、
ノワール(黒)もまた非常に人気があったようです。
以前紹介した皇帝の器でもノワールの花瓶は抜群の美しさでした。

さて、そんな中国陶磁器の専売特許のようなノワールですが
日本でも明治時代にそれを模したものが造られました。

今日紹介するのは、香蘭社が清時代にはやったfamille noire にならい造った、
中国の故事をモチーフにした、美しい艶のある色絵の花瓶です。

fukagawa noire 1

モチーフは、竹林の七賢。

阮籍、嵆康、山濤、劉伶、阮咸、向秀、王戎の七人。
三国時代(魏)に清談した賢者のことですね。
3世紀のことなので、日本で言うと邪馬台国があった頃の話です。

各人、いろいろな説話がありますが、こうやって見ると
誰がだれなんだか・・・・?

これはたぶんリーダー格の阮籍?
白眼視、という言葉で有名ですね。
嫌いな人には白眼、好きな人には青眼で
対応したという人です。

ん?これは青眼での対応のようですね。
機嫌もよさそうです。

fukagawa noire 2

稚児に琴を持たせています。

fukagawa noire 3

さて、明治時代の有田や瀬戸の陶磁器産業は開国した日本にとって
外貨を稼ぐのに重要な産業の一つでした。

西欧の市場で成功するためには、まず日本の陶磁器の質の高さを
証明しなければならなかったのですが
手っ取り早い方法として、当時西洋で国の発展と文明の高さを競い合った
万博に、有田や瀬戸の名工たちは腕を競って
素晴らしい作品を出品したのでした。

fukagawa noire 4

当時香蘭社を率いたのは、深川栄左衛門とその長男。

この時代の深川・香蘭社は、万博で数々の賞を受けるのですが
当時の香蘭社の作品は、有田に限らず、三川内などからも手を借りて
生産地にこだわることなく、質の高さのみにこだわっていたようです。

質の高さが求められた美術工芸の国際市場にあって
西洋に売り込もうとした香蘭社の優れた作品は、
当然ながらいつの時代でも磁器工芸の粋を極めた
中国のものから大きな影響を受けていました。

こうした自然の成り行きとして、当時大人気のチャイナのノワールを
模したものを造ったのも頷けます。

fukagawa noire 5

万博における苛烈な競争のせいもあってか、
こうやってみても、明治後期の香蘭社の作品は、
その技術や質の高さが
他の時代と比べても特に際立っているように思います。

fukagawa noire 6

豪華絢爛ですね~。

fukagawa noire 7

このノワールの花瓶ですが、以前紹介したように
欧米の倣い(?)として、ランプの台に作り変えられていました。

仕方がないので、さるアメリカ人の骨董商に頼んで
もとの状態に戻してもらいました。

fukagawa noire 8

骨董商曰く、出来上がったものをなじみのお客さん達(アメリカ人)に見せたら、
大いに褒められ
”すごい!こんな花瓶をもし手に入れたら連絡してくれ!”と
言われたそうです。

明治の香蘭社の作品は、今日の欧米人の目にも
素晴らしい美術工芸品として映るのですね~。

fukagawa noire 9

余談ですが、アメリカ人にも深川・香蘭社のファンは多くいます。

この日訪れた骨董屋さんにも、コレクターから預かった
明治時代の深川製磁の花瓶が、修理棚に置かれていました。

骨董やさん曰く、深川・香蘭社しか集めない収集家もいるのだそうです。

fukagawa noire 10

明治時代後期のものと思われる香蘭社のマークですね。
 Orchard です。
 
fukagawa noire 11

どうです?この艶の美しさ・・・・

ため息がでます・・・

fukagawa noire 12

有田の歴史は日本の陶磁器の歴史でもありますが
その長い歴史の中でも、最も花開いた時代は
元禄時代と明治時代であったと思います。

どちらも国際市場において、有田が交易の場で大いに奮い
外貨や海外からの輸入品をを稼いだ時期でありました。

fukagawa noire 13

陶磁器の繁栄期を見て、興味深いなと思うことは
こういう美術工芸品の最盛期というのは
当然ながら、歴史の中でも文化・文明が最も花開いた
時代と重なっていることです。

近代のテクノロジーの進歩と異なり、
時代が進むほど、比例して質が上がるわけでなく
その時代がいかに活気にあふれていたかどうかによって
作品の質も上がったり、下がったりするわけです。
おもしろいですね~。

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同じ有田のものでも、深川栄左衛門が幕末にイギリスに売り込んだ作品と
明治後期の作品では、その質が全く異なります。
たかが30年くらいのものなんでしょうけどね・・・


やっぱり香蘭社の作品は良いですね~
心惹かれます。


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Category: オールド香蘭社

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神の御業か、悪魔の仕業か ~古平戸 染付龍透彫龍文酒注~ 

それはある晴れた春の日。

スケジュールが突然空いたダンナさんと連れ立って、
古都フィラデルフィアまで足を延ばした日のことでした。
ブランチのエッグベネディクトを食べて、ルンルンと市街地をウロウロしていたら、
ダンナが突然、”例の骨董屋を覗こうよ!”と言い出しました。

例の骨董や、というのは染付龍山水文酒注を以前購入したお店です。

店に入るとロクサーヌが、
”あら!いいところにきたわね~!いい平戸がはいったのよ。きっと気に入るわ!”とのこと。

”ふ~ん、そんなにいいものが度々出てくるもんかね?”と内心思いつつ
あたりを物色する私の耳に、ダンナのコーフンした声が・・・・

”オーマイガッ!!!”

ふん?と振り返って見た私も思わず、

”オーマイガッ!!!!”

そこにはすごいものが・・・・

平戸焼の酒注。
どうみても、ものすごい高級磁器・・・

hirado dragon 1

それにしても、こんなものがなぜこんなところにあるのでしょう?

恐る恐る尋ねる私。

”これは結構(←足元を見られないように抑え気味に)いいけど、いくら?”
(ドキドキ・・・・}

”これはね、〇〇〇ドルよ~”

むっ!高い。
でも、買えない値段ではない。

というかこんなの絶対今後お目にかかれない!

・・・と、そんな骨董病ならではの症状も手伝って・・・

値切るしかないなぁ、でもどうやって値切ろうかな、と考えていると

ダンナが突然、
”ロクサーヌ、キャッシュ(現金)で払うから〇〇〇で売ってくれ!”と
突然交渉開始・・・・!?

エッ?もうちょっと値切れば?と思うケチな根性の私を尻目に
あっという間に交渉成立。
そのままATMに走るダンナでありました。


そうして、この素晴らしい平戸焼は我が家へやってきたのでした。

いらっしゃいませ。

hirado dragon 2

まずはこのすごい透かし彫りをご覧ください。

籠目、または六芒星と呼ばれる魔よけで有名な文様です。
平戸焼の透かし彫りにはよく使われるパターンですね。 

hirado dragon 3

この透かし彫り、なにがすごいかと言いますと、この線の鋭さ。
非常に鋭利に彫られています。

hirado dragon 4

反対側は別の文様が・・・・

籠目はもとは魔よけに使われる麻の模様からきていますが
裏の模様は、麻の模様の変形のようです。
おなじ六角形の幾何学模様ですが籠目とはちがうパターンですね。


平戸焼の透かし彫りでは、美術館所蔵の物、本などで見たものを含め、
この変形麻文様はみたことがありません。

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龍型の酒注ですが、本体には龍の文様が描いてあります。
いわゆる雲竜ですね。

後ろから見ると・・・こんなです。

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では、前からも見てみましょう。

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龍の細工物に雲竜文とは・・・

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蓋には、鶴と松が描かれています。
平戸焼ならではの繊細な絵付けです。

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さてこの龍型酒注、これだけ立派な細工物にはさすがにメトロポリタン美術館や北米の
名だたる美術館でもなかなかお目にかかれません。

特筆すべきは、やはりこの透かし彫りだと思います。

透かし彫りの技術は平戸焼を特徴付けるものの一つです。
天草陶石と網代陶石を合わせることで、造形しやすいだけでなく
磁器へ施す彫刻を可能にするわけですが、この彫刻の技術の高さは
他の平戸焼と比較することではっきりとわかります。

下の写真は以前紹介した、幕末・明治の色絵冠型香炉です。

おそらく有田で絵付けされたものですが、もともとの器は三川内で焼かれたものです。
この香炉にも、例の籠目文様の透かし彫りが施されています。

ちなみに、この手の有田・平戸合作の色絵香炉の中では
これはきちんと透かし彫りがされているほうなのですが・・・・

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改めて、この龍形酒注の透かし彫りと比べてみてください。

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比較にならない技術の高さがはっきりと見て取れると思います。

それにしてもこの透かし彫りの技術ときたら・・・・
並外れた技術というか、まるで神技です。

ダンナさん曰く、”こういうのは中国ではDevil's work(悪魔の仕事)というんだよ”

う~む。

神業と褒め称えるべきか、悪魔の仕業と畏敬の念を持つべきか・・・・
何れにしても、超人的な技術であることにまちがいはありません。


さて、海外に住む私にとって、平戸焼の魅力はその造形美の説明のしやすさにあります。

古伊万里も好きな私ですが、外国人と話すときにその魅力を説明するのは
いつも難しいな、と思ってしまいます。
例えば蕎麦猪口をみせて、その柄のシンプルさを粋なのだ、と説明しても、
なかなかわかってもらえません。
元禄期のものは別にして、古伊万里の魅力というのは
やっぱり日本人独特の美的概念によるものだなぁ~、と改めて感じるわけです。

その点、平戸焼は説明がしやすいと思います。
まずはその造形の技術の高さ。
いかに中国で造られる日本陶磁器の贋作が優秀だろうと、
こんな透かし彫りは絶対にコピーできるものではありません。

これだけの技術をもつ窯は、世界がいかに大きいといえど、
明・清時代の官窯くらいなのです。
この”絶対にまねのできない造形の難しさからくる美しさ”というのは
どんな文化圏に住んでいる人にも共通して理解できるものです。

同じことが平戸焼(全盛期)の絵付けにも言えると思います。
鍋島は確かに美しいと思いますが、平戸焼は、陶磁器の王様である
チャイナと比べても全くひけを取りません。

この”文化の違いに左右されない普遍的な美しさ”というのが平戸の魅力だと思います。

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もうちょっとこの龍形酒注を見てみましょう。

これはおそらく幕末くらいに造られたもののようですので
明治以降に輸出目的で造られた酒注と比べると、
造形がかなり繊細です。

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これは以前紹介した酒注ですね。
龍の頭部のアップです。

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比べて、こちらの龍の頭部は造りが細かいことがわかると思います。
同じような龍ですが、しっかり眉毛(?)やひげがついていて、
顔もはっきりと彫られています。

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個々で見ると、どれも美しい平戸焼ですが、こうして比較すると
技術にかなりの差があることがおわかりいただけると思います。

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さらにもう一つだけ、特筆すべき点を書いておこうと思います。

ご覧の通り、酒注の胴には透かし彫りが入っていますが、中をみると
ちゃんと二重構造になっているので液体を入れてもこぼれることはありません。

このdouble barrel の技術もまたこの作品のすごさを物語っていると思います。

平戸焼の本によると、まず外側のポットの部分の透かし彫りをいれて
その後に内側にもう一つ容器を入れて焼いたのだそうです。

大量生産はまちがいなくされていないと思いますが、
一体誰のために作られたものなのか、非常に気になります。

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造ったのは、今村十九郎(?)さん?
名工・今村六郎さんではないのかな・・・?

はて、だれなのでしょう?

今村家は云わずと知れた三川内・平戸の名門窯元です。
平戸焼の陶祖である朝鮮陶工の血筋である今村家に関わる陶工であろうと
思われますが、よくわかりません。

恥ずかしながら、まだまだリサーチが必要です。

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全体像。

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反対側。

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斜めから・・・

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雲竜文と籠目の透かし彫り。

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蓋にもちゃんと文様が・・・・

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凝った意匠ですが、全体的にはすっきりとしています。

中国陶磁器の影響を強く受けた平戸焼ならではですね。
洗練の極みです。

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さて私事ですが、もうすぐ都合により東海岸を離れることになりました。

引越しの時に、この平戸焼をどうやって運ぼうか、
毎日思案する日々です・・・・

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頭イタイ・・・・・

次回は初心にかえって(?)、明治の香蘭社のものを紹介したいと思います。


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Category: 平戸焼

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