03 «1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.» 05

肥前陶磁器あれこれ~

オールド香蘭社、オールド深川、古伊万里、平戸焼などを集めています。

 

Fantastic Voyage (古平戸・色絵唐子豆人形) 

今日は、昨年手に入れた秘蔵っ子・古平戸細工物の唐子人形を
紹介しましょう。

数ある古平戸細工物の中でも最小を誇る、極め付き!豆人形です。

色絵・唐子豆人形二体。幕末

ちいさっ!!

boys 1

かわいい豆人形ですが、かわいいだけでは済ませられないスゴイ人形なんですよ。

古平戸というとひねりもの、つまり細工物が有名ですね。
平戸焼ファンとして言わせてもらうと、平戸細工物のすごさは
使用陶石の性質による細工の精巧さにあります。

磁器の細工物は数あれど、精巧さを極めたものは日本の磁器では
古平戸だけだと思います。
これに肉薄できるのは、しいて言えば中国の徳化でしょうか?
残念ながらさすがの徳化窯でも、複雑な細工のものは作れても、
これだけ線のシャープな細工物は作れません。
古平戸の技術は本当に素晴らしい!の一言です。

この人形、平戸焼細工物として特筆すべき点が二点あります。
まずは、このサイズでこの精巧さ!

九谷よ!有田よ!こんなん絶対作れないだろう?といわんばかりの小ささ。
まるでミクロの決死圏!

o(^▽^)o Fantastic Voyage!

それにしても、どうしてこんな小さな人形を作ろうと思ったのでしょう?
謎です。

ちなみに幅2.5センチ、高さおよそ3センチでした。
(写真はインチ定規。)
十六寸(豆)よりちょっと大きいくらいです。

boys 2

もう一点は、この豆人形には上絵がついていることです。
平戸焼で色がついているものは通常錆釉や鉄釉などです。
つまり釉薬で色をつけるのが古平戸の特徴ですが、幕末や明治初期の
輸出品に限っては上絵付をしたものも存在するわけです。
これとほぼ同時期に
造られたと思います。

この女性と子供の像も珍品中の珍品ですが、
この唐子チャンもこれまた非常に珍しいものです。

boys 3

では、それぞれ紹介していきましょう。
まずは一人目。

平戸焼・永遠のモチーフである唐子チャンです。
唐子の豆人形というのは美術館などでも見かけますが、この人形の珍しいところは
その衣装です。唐子なのに、和装なんですよね。

平戸焼の細工物でみかける通常の唐子というのは大てい中国風の衣装を着て、
読書をしたり、太鼓をたたいたりしています。
しかし、この豆人形の衣装は和装。

ところで、この和装どっかで見たなぁ、と思ったら・・・
なんと能楽師の衣装でした。

boys 4

実は、野田敏雄氏の「古平戸細工物」の本に同時期に作られたと思われる
五人囃子の豆人形が掲載されています。
大きさはこちらの唐子よりも大きく、瑠璃釉などで色をつけた竹林七賢人と似た上品なタイプのものです。
こちらの五人囃子も能楽師の和装をつけていることから考えると、
この小さい唐子チャンたち、もしかして五人囃子だったのかも??

姉さん!三人行方不明です!! (゚д゚)

boys 5

しかしまぁ、手の込んだ豆人形ですね。
服のしわ、手のしわ一つ一つまでしっかり彫られています。

boys 6

では、二体目。
謡の拍子でもとっているのでしょうか。
一体目の唐子とは微妙にヘアスタイルも異なります。
こちらは後ろの髪をお団子にしています。

boys 7

先の唐子と異なり、こちらは裃をつけているんですよねぇ。
もしかすると、ひな祭りの五人囃子ではなくて、
能楽のワキ方囃子方の豆人形なのかもしれません。

だいたい古平戸の細工物というのは、平戸藩となんらかのかかわりがあることが
多いようです。

年末日本の実家に帰った時に家でみつけた昭和の豆人形も、
そのモチーフは平戸・最教寺の子泣き相撲でした。
平戸城内にある亀岡神社には能舞台がありますので、
この豆人形も能楽師・ワキ方の人形なのかも?

姉さん!シテ方が行方不明です! Σ(´Д`*)

boys 8

ご覧ください。
足袋の皺まで丁寧に彫られているんですよ。

余談ですが、江戸時代能楽師は武士に準ずる地位が与えられたそうで、
そのため楽師は裃や足袋の着用を許されたのだそうです。
このあたり、芸能の世界にも装束の違いでちゃんと格をつけていたんですね。

boys 9

後ろ姿。
キュートです。

boys 10


boys 11

boys 13

残念ながら、今回手に入ったのはこの二体のみ。
たぶん生き別れの(?)人形がこの世界のどこかにあるんでしょうけど。(つД`)ノ

boys 12

江戸時代、最高の磁器細工技術を持った平戸焼の職人に
その技術を駆使した豆人形をつくらせる、という遊び心。
こんな贅沢な遊びが許された時代にのみ、
本物のハイ・カルチャーが存在したのかもしれませんね。


(おまけ)
19世紀に資本主義の時代が到来してから1世紀以上が経ちました。
フランシス・フクヤマの言う「歴史の終わり」は自由経済主義の勝利を謳いましたが、
実際のところ、本人も認める通り自由経済そのものが世界経済を破綻させつつある今日この頃。
アメリカにおいては上流階級と下層階級の二分化が始まり、
フォーディズムによって生まれた中産階級はもはや消滅しつつあります。
残念ながら、日本も同じ道をたどりつつあるようです。

そんな社会で、遊び心のある細工物なんて一般人に手に入るわけねぇ!
と思われるアナタ、それでもまだまだこんな楽しいおもちゃがあるんですよ(゚∀゚)

見つけました。
冬の長崎空港で!
これぞ、現代の細工物! 

taberen 1

粘土でつくるミニチュアの食べ物が人気なのだそうですね。
アメリカでも、この手のクレイを使ってアクセサリーを作るクラフトが人気です。

こちらは、長崎在住の方が長崎空港にて年末販売していたもの。
食べ物の粘土細工ですが、なかなか精巧にできていて、しかもキュート!

娘はメロンパン(?)のネックレスを購入。
ぶらぶら見ていた私も、思わずこちらを購入。

長崎のお菓子の詰め合わせBOX!

taberen 2

開けてみると・・・・

まずは、カステラ!
taberen 3

福砂屋です。(裏にはなんと!ザラメが!)
taberen 4

桃カステラ。
taberen 5

よりより。(最近はソフトよりよりなるものがあります)
taberen 6

有平糖。
お茶席などのお干菓子として見かけますね。
(進化系は日本橋の栄太郎飴らしい・・なつかしいけど苦手な味ですのぅ・・)
taberen 7

そしてコレ!
長崎県人以外にはわからん代物でしょう。
これは一口香(いっこうこう、と読みます)
中が空洞になっているお菓子です。
おすすめは茂木一〇の一口香。
こんなに小さいのにちゃんと中が空洞になっています。
スゴイ!
taberen 8

作ったのは、Taberen (たべれん→長崎弁で食べられない)という作家さん。
ユーモアのセンスもありますねぇ。

taberen 9

柿右衛門(東インド会社→オランダ行き)の唐子と南蛮菓子(ポルトガル)。
時代が合っていません。ハハ・・・

taberen 10

長崎の菓子箱を眺める有田と平戸の唐子。
かわいいですねぇ。

時代は合っていませんが、この三つに共通していることが一つ。
それは、みんな大航海を経てそれぞれの場所にたどり着いたということです。
柿右衛門は肥前からヨーロッパへ。
この古平戸は三川内からヨーロッパ(イギリス)経由でオーストラリアへ。
そして長崎のお菓子は中国福建省やポルトガルなどから
航海を経て長崎にたどり着きました。

まさに、Fantastic Voyage!

九州のやきものとお菓子は、16世紀に始まったグローバリゼーションが作りだした
ダイナミックな文化を象徴するものでもあります。



ブログ村に参加しています。

にほんブログ村 美術ブログ 古美術・骨董へ
にほんブログ村

にほんブログ村 美術ブログへ
にほんブログ村

Category: 平戸焼

tb 0 : cm 2   

平戸焼細工物の傑作~瑠璃鉄青磁釉竹林七賢人筆筒~ 

平戸焼ファンの皆様、長らくお待たせしました!(笑)

今日は、スターバックス三川内焼製珈琲碗の発売を祝して、
コレクションの中からとっておきの平戸焼を紹介しましょう\(^o^)/

ついに、ついに手に入れました!!!
瑠璃鉄青磁釉竹林七賢人筆筒です。

7sages.jpg

タネもしかけもありません。
平戸焼としては超有名な七賢人の細工物です。
ほとんどの図録にお約束のように載っているので、ご存知の方も多いでしょう。

7sages 4

私がこの細工物を初めて見たのはもう5年も前のことです。
平戸の井元平戸焼資料館で初めてこの七賢人の筆筒を
見て、「これは絶対に手に入らないよね」と相方と話したものでした。
その時井元さん曰く、「平戸焼は細工物を集めないとおもしろくない」。

私もこれには全く同感で、平戸焼の魅力は細工物だと思うのですが、
この作品はその粋とも呼べる作品だと思います。

あれから五年。ついにこれを手に入れることができました。

7sages 3

七賢人については、以前香蘭社の記事ですでに紹介しているので省略しますが、
やっぱり七賢人は良いですね。
あくまで個人的な意見ですが、磁器の器に関しては七賢人のモチーフにハズレなし!
幕末の有田焼、明治の香蘭社、そして平戸焼、どの窯でも
この七賢人をモチーフにした作品は質の高いものが圧倒的に多いです。

賢者を7人も描くのはかなりスキルの高い職人を必要としますので、
結果良い作品になったということでしょうか。
それとも松浦藩と鍋島藩はどちらも教養の高い藩として知られていたので、
七賢人というモチーフそのものに教養的な意味合いを見出して
これらの作品が作られたのでしょうか?

興味深いところです。

7sages 5

ミュージアムピース、と威張ってよいこちらの細工物は、
実は日本の某有名骨董屋さんで購入可能のようです。
でも値段がねぇ・・・目玉が飛び出るほど高いんですよね。(;゜0゜)
まぁ、ミュージアムピースだからしかたないか。

7sages 6

私はこれは骨董屋さんで購入したのではなく、オークションハウスで落札しました。
最近はいろんなものがネットオークションに出品されますが、
残念ながら本当に有名なミュージアムピース級のものは
ネットにはほとんど出てきません。

今回のこのオークションでは、いくつか思い切って落札したのですが、
かなり良いものを手に入れることができました。オークションハウスだと
手数料とかいろいろ取られるのですが、それも今回はしょうがない・・と思うくらい
まぁ、珍しいお宝が手に入りました。

それにしても、まだまだあるところにはあるもんですね・・・(;゜0゜) 

7sages 7

さて、この作品の見どころは何といってもその繊細な細工です。
平戸焼の細工物はスゴイ!といつもくどいくらいに言ってますが、
実は職人さんによってかなり差があります。

この作品を作った職人さんは、瑠璃釉・錆釉・鉄釉・青磁釉などをかけて
根付や熨斗押さえなど、平戸細工物の中でも最高級の作品を手掛けたようです。

7sages 8

ご覧ください、この表情の豊かさ。

7sages 9

じいちゃんたちの顔、それぞれ異なります。
髭アリ、歯アリ、髪の毛も一本一本あってなかなかリアルです。
見ていて飽きません。

7sages 10

書を読むじいちゃんたち。命がけの議論しているようです。

7sages 11

こちらのじいちゃんはなにしているんでしょう?
呆けていますが、酒の飲みすぎでしょうか?

7sages 12

この竹林七賢人の筆筒はいろんな図録に載っていまして、
平戸焼としてはかなり有名ですが
実はそれぞれ作品によって微妙に異なります。

大きく分けると、染付中心のものと錆釉・瑠璃釉などのかかったものに分かれます。
詳しくは、野田敏雄氏の「平戸焼細工物」を見ていただければわかると思いますが、
質的に高いのは後者の鉄・瑠璃・青磁釉のかかったものです。
野田氏の本に、私のものとほぼ同じものが載っていますが、子供と話している
人の衣装にかかっている釉薬の種類が異なります。
野田氏のは鉄釉、私のは青磁釉です。

この七賢人の筆筒については、もう一つ自慢できることがあります。
それは、七賢人なのに8人いる!ということ!!!(萩尾望都か・・?)

竹林の七賢人と一般的に言いますが、美術品の多くは
この七人に加え、稚児が描かれています。
平戸焼の筆筒には、この稚児があるものとないものがあります。
筒は型をとって造られたので同じものですが、それぞれの人物の細工は
個々に作られたもので、このお稚児さんがついているもので本来
完成されたものだったようです。

野田氏の本に掲載されているものにもお稚児さんがついていますが
隣のじいちゃんとかなり接近しています。思うに、細工物を作っても
土台に収まったり、収まり切れなかったりして、
結果細工物の最終人数がまちまちになったのかもしれません。

いずれにせよ、稚児があるのはアタリ!です。ヽ(´∀`)ノ
ラッキー!

7sages 13

竹林の瑠璃釉。
平戸焼の色物は良くない、などといった馬鹿者は誰だ??

7sages 14

側面。
平戸焼の文房具があると、勉強も楽しくなる・・?

7sages 15

余談ですが、このように文房具に凝るのはもちろん中国の
習慣で、西洋ではChinese Scholar's desk などと呼ばれます。
景徳鎮や徳化窯などで筆筒、水滴などが多く作られました。

東シナ海で中国南部とつながっていた松浦藩が、このような
中国の文化に大きく影響を受けたのは当然のことでしょう。
唐人屋敷があり、多くの中国人を抱えた長崎の亀山焼も
平戸同様、硯屏風や熨斗押さえ、筆箱などを作りました。

今日平戸焼の里というと、佐賀県境に近い三川内を思い浮かべますが、
江戸時代までの平戸焼の作品は、平戸松浦藩の教養的な意向が
大いに反映していたようです。

そう考えると、平戸焼の本当の魅力というのは
作品の背後にある松浦藩の教養そのものであったという気がします。
美術工芸品というものは、技術の高さだけが
その価値のすべてではないうことです。

7sages 16

野田敏雄氏の平戸焼細工物。
細工物ファンにとって必読の書です。(笑)

7sages 17

7sages 2

最後になりましたが、先に述べたように、佐世保スタバ限定で
三川内焼の佐世保をモチーフにしたカップが販売されています。

珈琲碗を日本で最初に作ったのは平戸焼です。
以前卵殻手の記事
紹介しましたが、平戸藩は19世紀初頭ヨーロッパに向けて卵殻手のカップを
多く輸出しました。
中でも有名なものは、兜型と言われる碗です。
スタバのカップもこの兜型を現代風に取り入れた作りとなっています。

10月上旬発売のこのカップ、どうしてもほしかったので
実家の両親が電話をかけてくれた折に、「佐世保にいったら
スタバで三川内焼のカップを買ってきて~!」と頼みました。
それから数週間後、母から電話が。
「佐世保五番街で買ってきたよ!なんか変わった形やったけど??」。
ハハハ・・・(*´_ゝ`)

カップの中には、海軍さんの街らしく錨が描かれています。
モダンでとっても素敵です。これでコーヒーを飲むのが楽しみ!

来年は「坂道のアポロン」の映画も公開されるし(というか、あのキャスト
どーにかならんかったのかい??)、黒島教会も世界遺産に登録される予定だし、
ついに佐世保ブームくるか??
楽しみです。

佐世保を応援しましょう!!!

スタバカップのリンクはこちら

みんな、佐世保へ急げ!!!(^∇^)ノ

ブログ村に参加しています。

にほんブログ村 美術ブログ 古美術・骨董へ
にほんブログ村

にほんブログ村 美術ブログへ
にほんブログ村

Category: 平戸焼

tb 0 : cm 8   

有田と平戸のコラボ ~卵殻手・色絵花鳥文碗皿・蔵春亭三保~ 

出尽くした感のある卵殻手ですが、このあたりで
ちょっと珍しいものを紹介しましょう。

有田で絵付けされ、幕末から明治にかけて海外へ輸出された
久富家の蔵春亭・三保の卵殻手碗皿です。

zoshun 1

以前にも書きましたが、幕末、明治初期には有田でも薄手のコーヒー碗が
造られるようになりましたが、残念ながら卵殻手と言えるほど
薄いものではなかったようです。

こちらは卵殻手。
平戸・三川内で焼かれ、有田で絵付けされたものです。
いわば、平戸・有田夢のコラボと言ったところでしょうか。

zoshun 2

ご覧の通り、柴田コレクションでもおなじみ、いわゆる幕末から
明治初期にかけての図柄、窓絵に金羊歯模様です。

zoshun 3

有田と平戸は、江戸時代においては数あるやきものの窯を持つ藩から
選ばれたいわゆる御用窯でしたので、どちらもプライドは相当高かったと思われます。
有田は主に絵付け、特に色絵を得意とし極めたのに対し、平戸は上品な染付の図柄と優れた造形の
細工物を得意としました。

通常であれば、有田と平戸のコラボというのは両者のプライドの許すところでは
なかったのかもしれませんが、幕末の政治的、経済的に特殊な状況が
これを実現することとなりました。

zoshun 4

蔵春亭の輸出ものの多くは、国内市場と比べると
質が高いものが多いのですが、特に平戸とのコラボは
色絵であれ染付であれ、ワンランク上の出来のものが多いようです。

zoshun 5

ご覧ください。
素晴らしい絵付けです。

骨董屋に言わせると、「平戸は色が悪い」そうで、まぁこのあたりは
好みの問題がないとは言えませんが、一般的には有田の絵付けは
やはり完成度が高く、色彩も華やかです。その分、造形はイマイチですね。
陶質の問題だと推察します。

一方、平戸は造形が確かなミニマリストですが
色絵のものは有田の華やかさには負けると思います。

しかしまぁ、お互いに傾向は異なれど完成度は高いわけです。

この二つのイイとこどりをしたのが、蔵春亭の輸出ものであると
思います。

zoshun 6

一粒で二度おいしすぎます・・・o(^▽^)o

zoshun 7

窓絵の花鳥も素晴らしい発色ですね。
赤色の背景に映えます。

zoshun 8

手抜きなしで、かなり完成度の高い絵付けです。

zoshun 9

1840-1860年頃のものです。幕末ですね。

zoshun 10

さて、夢のコラボと言いましたが、よく考えてみると
有田と三川内が今日隣町であるとはいえ、
当時は、鍋島と平戸という別々の藩に所属していました。

この有田の輸出磁器産業で実現した「平戸の作品に有田で色をつける」という
離れ業は、その後輸出磁器業が有田の久富家から田代家へ移った時に
そのモノポリをめぐり大問題となります。

これが後に香蘭社を起こす深川家の台頭のきっかけになるわけですが、
ともあれ、国際市場で中国磁器と戦うには
有田のみでなく、平戸の助けが必要だったというのは
非常に興味深いところですね。

zoshun 11

この卵殻手に象徴されるように、明治時代、有田焼は欧米の万国博覧会で
数々の賞を受賞し、大いに繁栄するわけですが、その代表である香蘭社や
宮川香山の作品が、平戸焼の影響や助力なしにはあり得なかったのは
海外でそれらの作品を目の当たりにする者には明白です。

zoshun 12

中国の景徳鎮と欧米市場で競った肥前磁器。
有田と平戸がもたらした技術は
明治時代の殖産興業の一端を担うことになります。

zoshun 13

蔵春亭・三保の卵殻手、やっぱり良いですね( ^ω^ )

次回は、そろそろ大物を出すかなぁ・・・?


ブログ村に参加しています。

にほんブログ村 美術ブログ 古美術・骨董へ
にほんブログ村

にほんブログ村 美術ブログへ
にほんブログ村

Category: 平戸焼

tb 0 : cm 0   

色の問題 (古平戸焼扇形蒲公英蝶文皿) 

あっという間に2月に逃げられ3月にも逃げられそうな今日この頃。

ブログの更新も滞っていますが、なんのことはない
写真を撮って、サイズを変えてアップロードしてブログを書くのが
面倒くさかったというだけです。
別のプロジェクトも始めたので、本当になんだか忙しいなぁ。( ノД`)

さて、今日は珍しい江戸期の平戸焼の皿を紹介しましょう。
こう思い立ったのには以下のような理由があります。

実は私はかの有名な野田敏雄先生の平戸焼関係の本を読んだことがありません。
是非手元にほしいのですが、いかんせん日本に住んでいないし、日本の骨董屋さんには
「どこででも手に入りますよ」と言われていたので、ついつい買いそびれていたわけでした。

しかし、ついに最近重い腰を上げ、東京に住む妹にでも頼むつもりで購入しようとすると
なんと!在庫がないっ!数少ない在庫はべらぼう高いっ!

なんでぇ~???

どうも、昨年人気骨董ブロガーさんが野田敏雄氏の本を購入したのを機に
そのお友達のコレクターさんたちが皆この本を購入したらしいのです。

あらら?平戸焼人気あるじゃん?
平戸焼の知名度が上がるのはコレクターとして嬉しい反面、
本が買えない苦境に立たされるのはつらい気もしますが・・・

さて、興味深いのはこの本を購入した古伊万里コレクターさんたちのブログでのコメントです。
このコレクターさんの中には古伊万里収集をしている人も多く、いわゆるミュージアムピースを
いくつも所蔵している人もいるわけですが、ブログを読むと実は平戸はあまりご存じではない様子。

ど~も、平戸とは伊万里港から運び出された肥前やきものの一つで
有田はもとより波佐見など「伊万里」と呼ばれるものの一つらしい、と理解しているようなのです。

そんな馬鹿な~!Σ(´Д`*)と、私などは思うのですが
まぁ九州の地理や歴史に明るくないとそういうこともあるのかも?

平戸焼が国内であまり知られない理由の一つには
生産量が有田などに比べて圧倒的に少ないことがあると思います。
それもそのはず、平戸を有田とひっくるめるのはそもそも間違いで、
平戸は御用窯ですので、むしろ鍋島藩窯のものと一緒に考えられるのが
正しいわけです。

そう考えると、平戸の良いものがあまり知られていないのは至極当然です。
御用窯であり、生産量が少ない上に、江戸時代には一部の
上流階級にしか手に入らなかったものですので、
今日骨董屋で探そうとしても、そう簡単に手に入るものではありません。
本物の江戸期の鍋島がそう簡単に手に入らないのと似ています。

余談ですが今日手に入る平戸焼(皿など)の多くは明治以降に作られたものが中心です。
ま、しょーがないですね。


さて、骨董市場に出回る江戸期の古平戸は少ないと書きましたが、
今回紹介する皿はどうやらその数少ないものの一つではないかと思います。
なにしろ、その白磁の白さが有田のものとは全然違います。
上質の有田焼という域を超えた白さなんです。

それがこちら。

dl1.jpg

写真では青みがかっていますが、実物は真っ白です。
有田焼の場合、通常はちょっと青みがかかっていますが
これは本当にまじりっけなしの白色です。
数あるコレクションでも、こんな色はこれ以外見たことがありません。

ああ~この白をちゃんと撮れるライカがほしい!!!・゚・(つД`)・゚・

dl2.jpg

造形も、線のシャープな感じがわかりますでしょうか?
1680年頃の有田(柿右衛門系)や鍋島の皿には
こういった線がシャープなものがありますが、これは白磁の質感から
言って、有田や柿右衛門系とも一線を画します。


dl5.jpg

図柄は、蒲公英と蝶。
蝶は蝶でも、有田じゃないよ!o(`ω´ )o

dl6.jpg

九陶発行の「将軍家献上の鍋島・平戸・唐津」などを見るとわかりますが
蒲公英文は、将軍家献上用にも作られた図柄でした。

ただ、献上平戸にある蒲公英文は、葉や花の描き方が
江戸中期とこの皿では異なります。
個人的には、この絵付けはどことなく
有田を思わせないでもありませんが、素地が有田とは異なると確信しているので、
やはり江戸後期ごろ作られた平戸ではないかと考えます。


dl7.jpg

このお皿、本当に真っ白で気品があります。
平戸焼はこの気品があるところが身上ですが
これはまさに貴婦人!のような美しさ。

色などをごちゃごちゃ使わず、染付の端正な画と白磁の圧倒的な白さだけで
勝負します。日本的なミニマリズムの勝利です。


dl9.jpg


dl8.jpg

小さな皿ですが、手抜きなし。

これが裏です。
端正な後ろ姿。

この皿の白磁の美しさを一番よく味わえるのは
この裏を見たときなんです。

江戸期の平戸焼ですので、当然裏銘はありません。

dl3.jpg

明治以降に作られた平戸焼も、有田などと比べるとやはり質の高さは
抜きんでているように思いますが(ものによりますけどね)、それらと比較しても
この皿は抜きんでた美しさだと思います。

無駄なことだと思いましたが、一応有田のものと比較しました。
下の写真は、1680年頃の渦福銘の皿です。(贋物じゃないよ)
個人的には、結構良いものだと思っています。

しかし、有田全盛期のものと比較しても、この平戸の皿の美しさは
圧倒的です。
こうやって見ると、平戸はやはり鍋島と比べられるべきものであることが
よくわかります。

ここで、骨董屋のおばちゃんの名言が・・・
「平戸は貴婦人。平戸に比べると有田は田舎娘が着飾っとるごたる」

おばちゃん、すごい!(;゜0゜)
深いぜ・・・

こういう良質の平戸焼は御用窯だったという栄光を存分に見せつけてくれると
思うのですが、なかなか簡単にはお目にかかれないのがつらいところですね。

とはいえ、こういうものがもっと世間に紹介されると、不勉強な骨董屋が
ちょっと上質の有田焼をみて、「これは平戸です」などと言うこともなくなると思いますけど・・・
時々、「乾」の銘があるのに平戸焼とか紹介しているのを見ると
九陶で柴コレなり銘款集なり買って、読んでくれ~!と思ってしまいますけどね。

( ´ー`)フゥー...やれやれだぜ・・


dl4.jpg

平戸焼という命題において一番大切なのは「白さ」の問題なのです

色の問題といえば・・・・

余談ですが、その昔バークレーで卒業式に出席するため
学生課に博士号用のフードを取りに行ったら、手違いで格下の博士号用のフードしかないと
言われました。(博士号にも実はいろいろある)

さすがにそれは・・・と思い、

「( ゚Д゚)ハァ??冗談じゃないですよ!」と怒ると、事務員曰く
「いいじゃない(←?おいっ!)博士は博士なんだから。
色が違うだけでしょ?誰も気にしないわよ」というので、思わずぶち切れて

「色が違うだけ~?(肌とかの)色の違いだけで、世界中にどんだけ紛争が起こっているのかわかってんのかっ?
色の違いはささいなことじゃな~い!それでもリベラルの総本山バークレーか!」
と怒ってしまいました。

その後、その足で指導教官のところへ行くと、
「あらら?私が予備を持ってるからそれを使っていいわよ」と
教授がどこぞの大学からもらった名誉博士号用のフードを貸してくれました。
卒業式に出た同期の友達に話すと、皆羨ましがって、
「結果オーライじゃん?そっちのほうが全然ラッキーだよ」と
言われましたが、あの時は本当に頭にきたなぁ・・・・・

バークレーよ、平戸に限らず色の問題は世界中どこでも深刻な問題なのよ・・・


dl10.jpg

江戸期と思われる平戸は、数あるコレクションの中でも
さすがにこれだけです。
でも一つでも手元にあると、他の磁器との違いがはっきり分かるので
勉強になります。

御用窯は偉大なり。(^∇^)


ポチっとよろしく。

にほんブログ村 美術ブログ 古美術・骨董へ
にほんブログ村

にほんブログ村 美術ブログへ
にほんブログ村

Category: 平戸焼

tb 0 : cm 0   

輸出平戸卵殻手 (2) 

前回の卵殻手の続きです。
第一弾、拍手の数が多かったので
すっかり気をよくしています。

さて、輸出平戸卵殻手は、前回紹介した兜型蓋椀が主流のようですが、
実はこれ以外にも形が異なるものがあります。今回は兜型以外のものを
紹介したいと思います。

まずはこちら。

(6)色絵漢詩文チョコレートカップ

eggshell 13

縦長のカップは、チョコレートカップとしてオランダに多く
輸出されました。

eggshell 14

Prince of Porcelain にも掲載されているように、
同型のチョコレートカップでは、通常錦絵が多いのですが、こちらは
漢詩文というところがポイントです。
なぜか平戸の漢詩文のものは色絵、染付に拘わらず良い蹟のものが
多いようです。

思うに、絵師が異なるのではないかと思います。
錦絵のものは、おそらく有田の蔵春亭や田代門左衛門(信甫)のものに
絵付けをしていたグループのもので、こちらはそれ以外の絵付けグループが
あったのではと思いますが、このあたりはまだまだリサーチが必要です。

eggshell 16

漢詩文。
明治の平戸焼に多いそうですよ。

eggshell 15

余談ですが、チョコレートカップというのは
古伊万里のものが大航海時代(18世紀初頭)にVOCを通じて
ヨーロッパに出回りました。
同じような形ですが、古いものはこれに蓋がついていたようです。

中南米からもちこんだ薬として珍重されていたチョコレートが
ヨーロッパで流行ったわけですね。

そういえば、今年正月明けに湯布院へ行った時、金鱗湖の
キャラバンカフェへ行ったのですが、
注文したコーヒーにチョコレートシロップが入ったものが出てきました。
こういう飲み方がヨーロッパでも流行ったのでしょうね。

スタバのカフェモカとはエライ違いの良いお味でした。

色絵卵殻手、そろい踏み。同じ頃輸出されたものでしょう。

eggshell 22

(7)染付・秋草文 (蔵春亭・三保)

eggshell 2 05

こちらは、またまた有田の蔵春亭・三保経由の輸出卵殻手です。
上品な染付の絵付けですね。
やっぱり蔵春亭発注のものは、高級磁器の傾向があります。

eggshell 2 06

秋草の図柄は、御用窯の平戸藩が将軍家や公家用に作っていたものに
見られるようですが、鳥だけでなく有田の蝶が飛んでいるとことに
注文の細かさを感じます。(笑)

eggshell 2 07

裏銘。

eggshell 2 08

この手の卵殻手は、サイズも他のものよりもやや大きめです。
卵殻手と言えますが、兜型やチョコレートカップと比べると
やや厚手です。

光にかざすと、高台まわりに厚みがあるのがわかります。

素晴らしい一品です。

eggshell 2 09

最後になりましたが、こちらは城のついた珍しい図柄です。
あんまり珍しいので、欠けがあるにも拘わらず購入。

(8)染付・山水楼(城?)文チョコレートカップ

eggshell 2 10

こちらも、上述の桔梗文同様、やや厚手の出来です。

eggshell 2 11

見た目からも、通常の卵殻手よりもやや厚みがるのが
わかると思います。
絵付けもあまり良いとは言えませんが、興味をそそるモチーフです。

eggshell 2 23

前に海が見えるので、平戸城でしょうか。

eggshell 2 12

平戸製の輸出卵殻手の蓋椀およびチョコレートカップのコレクションは以上です。

(実はこれに加えて亀山銘のものもありますが、こちらはもうちょっと調べてから
そのうち紹介します。)

精巧な細工物と極薄の卵殻手は、網代陶石と天草陶石を用いた
平戸焼ならではのもので、まさに真骨頂と言えると思います。

卵殻手は戦前くらいから造られないようになっており、長いこと「幻の卵殻手」などと
呼ばれてきましたが、三川内の平戸藤祥が近年製造に成功し、TVでも
そのようすが放映されたそうです。


平戸焼が、昨今の流行に惑わされず正攻法で復活しようとするのは
長い目で見ると、正しい戦略だと思います。

がんばってほしいですね!

(おまけ)

明治初期、有田も薄手のデミタスを作りました。
有名なものは、深川栄左衛門銘のものでしょうか。
私は深川製が好きでいくつも持っているのですが、
有田の薄手デミタスは、通常は残念ながら卵殻手とは言えません。

・・・が、しかし!なのです・・・
最近手に入れたこのデミタスカップ。裏は深川銘(栄左衛門の頃)で
同じタイプ(形)のものが有田製であるのですが、このカップは
重量は軽め、平戸製卵殻手デミタスカップにかなり近い作りです。
気になるのは、その絵付け。
この絵付けも、輸出有田というよりは輸出平戸なんですよねぇ。

eggshell 3 1

19世紀中頃の長崎の出島で一体なにが起きていたのか
気になりますね。

eggshell 3 2

今日は、湯布院で買ってきたキャラバンのコーヒーを淹れて、
長崎カステラをいただきました。
残念ながら福砂屋ではなく、新大工の長崎屋のカステラ。
でもおいしかったですよ。

ごちそうさまでした。

ブログ村に参加しています。
ポチっとヨロピク。

にほんブログ村 美術ブログ 古美術・骨董へ
にほんブログ村

にほんブログ村 美術ブログへ
にほんブログ村



Category: 平戸焼

tb 0 : cm 0